あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

人類の孤独ざる盛り

夕暮れ時にショッピングモールを歩いていて何か視線めいたものを感じ、ふと見ればそこにあった食品サンプルのひとつが自分の目を捉えて離しません。空腹ではなかったので反応したのは食欲では無く、自分のなかの別の何か。
 宇宙規模的な、2017年の孤独がそこに配列されていました。『人類の孤独ざる盛り合わせ』です。片岡義男さんの小説に『誰もがいま淋しい』というタイトルがあったこと、ふと思い出しました。これで980円だそうです。値段すらも孤独です

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鎌倉の鈴虫

鈴虫寺といえば京都 妙得山 華厳寺が有名ですが、自分にとっては北鎌倉 円覚寺です。北鎌倉駅あたり、横須賀線円覚寺境内を横切っていて今時分の夜は、北鎌倉駅に着き電車のドアが開くと、驚くべき音圧の虫の音。ほろ酔いでうたた寝などしていると、目が覚めます。
 今朝、鎌倉の下馬交差点を渡っていたら、ちょうど鎌倉女学院の生徒たちの通学時間で、警官が交通整理をしていました。その警官が鳴らす笛が、鈴虫っぽい音色だったので、「さすが鎌倉」と感心。でもよく見たら音はすれど、誰の口にも笛がありません。それは笛の音を模した、携帯電子ホーンなのでした。信号の変わり目、ちょっと急かすようピッ、ピッ、ピピッと鳴らすのも、いまやデジタル。諸行無常の響きあり

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O MO TE NA SHI

自分が最初に朝食のご飯を部屋ごとに炊き分けているのを取材したのは湯河原温泉の石葉(せきよう)という旅館でした。前夜にお客さんから言われた朝食の開始時間にあわせ、それぞれのご飯をいくつものカセットガスコンロに載せた釜で炊きあげていました。火加減の調整がシビアで、かなり調理場は慌ただしかった。
 写真は別府温泉の花べっぷという旅館で目撃した、自動個別釜炊きマシーン。なんだかアートです。開催中の現代アート展『ヨコハマトリエンナーレ -2017- 島と星座とガラパゴス』会場にあっても、違和感なく見てしまいそう。タイトルは『O MO TE NA SHI』かな。

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ぱんちょうの華さん(仮名)

豚丼の名店『ぱんちょう』は帯広駅(北海道帯広市)前にあります。豚丼のグレードが高い方から華、梅、竹、松となっているのは、店の創業者、阿部秀司さんの愛妻の名が梅だったから。松竹梅とはけしからん、梅が一番上等だろう、ということですね、いい話ですね。その日、自分の豚丼をテーブルに置いてくれたのは、お年をちょっとだけ召した割烹着姿の女性で「蓋はそっと上げてください。豚肉がくっついていることがあり、剥がれて落ちることもありますので」と名台詞。「もしかして梅さんですか?」と聞いてみたら「いいえ、先代はもう亡くなりました」とのことでした。
 蓋をそっと開けると、そこには素晴らしい景色が広がっています。ちょっと刺激的なので、今回は写真を豚丼到着前のものに自主規制。食べながらメニューを眺めていて、梅の上に華があるのは、さきほどの女性が華さんだからでは? と新たな疑問が。お会計の担当も華さん(仮名)だったので「もしかして、お名前は華さんですか?」と聞くと「いいえ。全く別の名です」と微笑。調べたら、華さん(仮名)は、創業者ご長女の幸子さんでした。梅の上の華はもともと特盛りを略した「特」だったのを、女性も注文しやすいよう「華」に改名したとのこと。自分的には「幸」がいいと思うのですが。それにしてもぱんちょうの豚丼は蓋から絶妙にはみ出していて、とても艶めかしい。ゆっくり外せ、というのも色っぽいし。やっぱり写真掲載は控えておきましょうね

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ボストン夕景

外国滞在中、ああここは日本ではないのだなぁ、と実感するのはどんなときですか? 自分は海辺の景色を見たときです。本来、自由への玄関であるはずの海辺が、日本はいまいち息苦しい。
 写真は米東海岸、ボストン(Boston, Massachusetts, USA)の夕景。ヨットやディンキーの勝手気儘な舫い方がいいですね

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くっちゃんのゆきだるま

羊蹄(ようてい)国道と呼ばれる国道5号線を、倶知安(くっちゃん:北海道虻田郡)から余市に向け走り出してすぐ。右手で、ゆきだるまが微笑んでいました。『農産物直売所くっちゃんマルシェ』の屋根の上です。真ん中のお子さんの、楽しげな体の傾きがたまりません。手もパーだし。右側はお母さん? 水色の眼は、広い大地を見続けた虚無ゆえでしょうか。
 残念ながらマルシェはお休みでした。北海道では既に収穫の秋が始まりつつあり、帰路の荷物に重量制限のある飛行機利用者には、ジャガイモとか、メロンとか、目の毒です。きのこ王国とか、ついついトマトやとうきびを手にしたりして、まじヤバい。そんな、せちがない煩悩とは無縁なのでしょう。この3人、ほんとうに楽しげです

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圏外への旅

フェリーの旅はいいものです。乗船して移動しているのだから、旅の只中なのに、のんびりと過ごせます。あの、とりあえず圏外だし何もすることないし感は、海上を行くフェリーならでは。写真はスオーナダ(周防灘)フェリー乗船中に撮りました。島も海も和風だと、船すら和風に見えるから不思議です。
 いま一番気になっているフェリーは宿毛港(高知県宿毛市)と佐伯港(大分県佐伯市)の間、78kmを3時間10分で結んでいる宿毛フェリーです。1000tの『ニューあしずり』一隻で1日3往復しています。10月頃に、オートバイに跨がって乗船してみたいなあ

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エニワン エルス

 キャデラックCTSのメーターは12.3インチのクラスターパネル。スピードメーターの右側はカラー液晶のDIC(ドライバーインフォメーションセンター)とのこと。自分のiPhoneApple CarPlayにコネクトさせ、音楽を聴きながら試乗していたら、曲が変わる度、DICの画面が切り替わり曲情報とジャケ写が表示されます。音源がSpotifyかTunein Radioか、Amazon Musicだったか忘れてしまいましたが、そうなります。
 そのときかかっていたのは、ブレイク・シェルトン(Blake Shelton)というカントリー歌手のエニワン エルス(Anyone Else)とのこと。運転しながらラジオ的に聴き流す初めての曲でも、瞬時にタイトルとアーティスト名がわかるのは、北米を旅するときとかにいいだろうなあ。その後このタイトルを検索し、1950年後期のシボレー アパッチ(Chevrolet Apache)と覚しきピックアップトラックでのシーンから始まるMVを鑑賞。クルマが優れた情報端末になりつつあると、実感しました

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夜明けのμ

 夏のツーリングは、蝉が鳴き始めるまでが勝負。早朝は道は空いているし、涼しいし。テント泊では夜明けの気配とともにテントを畳んで出発します。
 1987年のヒットに『夜明けのミュー』(小泉今日子)という曲があります。自分はこれを『夜明けのμ』だと三十年間、つまりつい最近まで思い込んでいました。μとは摩擦係数を指し〝夜半から降雨で、路面のμが極端に下がり……〟といった風に使います。夜明け独特のザラッとした淀みや空気がふたりの仲を蝕んでいく的に解釈していましたが、実はミューは『MEW』で、これは猫の鳴き声なのだそうです。夜明けのニャー、ですね。とはいえ三十年の歳月もあり、自分的には断然『夜明けのμ』です。角島大橋(つのしまおおはし:山口県下関市豊北町)にて

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船、家、クルマ、鉄球、戦車、水槽、牛乳。

北海道を走っていると、すれ違うトラック、トレーラーがバリエーションに富んでいます。首都圏においてメジャーなアルミパネルタイプは、むしろマイナー。実にいろいろなものが半ばむき出しで荷台に。建機、動物、藁、丸太、船、家、クルマ、鉄球、戦車、水槽、牛乳……。オートバイで走っていて気づいたのですが、トラックは、車体の美しさと運転マナーの良さがほぼ正比例しています。
 リトル・フィート(Little Feat) の曲に、トラックドライバーを歌ったウィリン(Willin')という名曲があり、北海道を走っていると聴きたくなります。本州、四国、九州では、トラックのBGMといえば『走れ!歌謡曲』ですが、自分的には北海道のみ『ウィリン』です

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神戸走馬燈タワー

神戸ポートタワーです。先日行ったら、周辺のメリケンパーク内に、スターバックス コーヒー(神戸メリケンパーク店)が出来ていました。105席を擁していて、3割強がテラス席。朝8時開店だそうです。ちょっとうらやましいロケーションです。近くの神戸海洋博物館内にある企業ミュージアム、カワサキワールドもオートバイ好きとしては見逃せません。
 元町駅から徒歩で15分ほどです。自分はこのポートタワーを見ると反射的に、学生の頃を思い出します。近くの高架下(元町高架通商店街)で買ったショット(Schott)のボンバージャケットのゴワゴワした着心地や、ジャックパーセル(JACK PURCELL converse)の優しい履き心地がよみがえります。南京町の二階の店で食べた炒飯の香りも。目に入った瞬間いろいろ思い出す、自分的には走馬燈のようなタワーです

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ウオーターメロン マン

国道134号線の三浦海岸交差点(神奈川県三浦市)のハンバーガーショップの二階客席から外を眺めていたら、西瓜を載せた軽トラックが通り過ぎました。このあたり、三浦スイカの産地であり、今は収穫只中です。ハービー ハンコック(Herbie Hancock)のウオーターメロン マン(Watermelon Man)がきこえてきそうです。
 YAMAHA RZ250というオートバイに乗っていたとき、ツーリング先でスイカを買ったことがあります。あれは阿蘇でした。走っていても熱風があたるだけ、あまりに暑くて、道路脇の木陰に軽トラックをとめて、スイカを売っているおじさんの横で、しばし休憩。コワモテのオジサンが、スイカを切ってくれ、全く冷えてないけど妙にうまくて、1玉買いました。ところが積んだら重心が高くなり、固定が難しくコーナーごとに暴れ、大変でした。そのスイカをその後どうしたか、食べたのか、誰かにあげたのか、まったく覚えていませんが「ツーリング中にスイカを一玉買ってはいけない」と肝に銘じたことは、はっきり覚えています。その頃、1980年代はじめの阿蘇のスイカは、ビックリするくらい大きく重かった。気分的にはオールマン ブラザース バンド (THE ALLMAN BROTHERS BAND)のイート ア ピーチ (Eat a Peach) のジャケットの絵くらい、大きかった!

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野朝顔の生け垣仕立て、妖怪百目風。

三浦海岸に向かう途中、須軽谷(すがるや:神奈川県横須賀市)にノアサガオ(野朝顔)の生け垣がありました。宿根アサガオ琉球アサガオ、西表アサガオケープタウンアサガオとも称されるこの朝顔、繁殖力が強いようで、よく見るようになりました。つる性の多年草で、関東以西では戸外で越冬できるそうです。
 夏のツーリング中、十メートル以上の塔を覆い尽くしているのにいきなり出くわすと、一瞬ゾッとしたりします。妖怪百目(ひゃくめ)っぽい。自分はちょっとトライポフォビア(trypophobia:集合体恐怖症)気味なのかも。怖いけど、惹かれます

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ポンピドゥーにて

十年ほど前の夏、パリのポンピドゥーセンター(Centre Georges-Pompidou)の広場で馬頭琴の演奏をしていました。ホーミーも披露してくれました。欧州からすると日本は海外ですが、モンゴルは地続き。馬頭琴の重奏により、広場に馬の大群が駆け回った(ように思えた)名演奏でした。
 そのポンピドゥーセンター、現在はデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)展を開催中です。生誕80周年を記念し、170点以上の絵画、写真、版画、ビデオ インスタレーション、図面等を集めた大回顧展、かと思いきや、御年80でご存命でした。失礼いたしました。毎週木曜は、23時迄開館しているそうです。夏の夜、デイヴィッド・ホックニー展を観にポンピドゥーへ、というのには、ちょっとそそられます。いや、ちょっとじゃないかも。ちょっとでは、ないなぁ

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ちゅうちゅうに会いに

竹中工務店東京本店1階にある、GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)で開催中のヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』展にあった、『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』の原画です。ちゅうちゅう好きの自分としては、たまりません! 会場に設置されたモニターでは、ヴァージニア・リー・バートンご長男のアリスティデス・デメトリアスさんが語る母、的なインタビューが流れていて「彼女はよく、すべての人の内面にアートがあると口にしていました」とコメント。アリスティデスさんも『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』が最もお気に入りとのこと。かなりご高齢とお見受けしましたが、腕にはApple Watch、パンツはTHE NORTH FACEでキメてられていました。
 ヴァージニア・リー・バートンの『ちいさいおうち』展は8月9日まで。会場であるGALLERY A4へは、東京メトロ東西線 東陽町駅 3番出口から徒歩3分です。『きかんしゃやえもん』もいいけど、やっぱり自分は『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』派だな、と深く強く再確認しました

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