あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

356!


十日ほど前の週末、長野に向けて上信越道を下っていたら、ポルシェ356を何台か見かけました。生憎の雨でしたが、活き活き走り去る姿は眼福です。どうやら長野県下でインターメカニカのオーナー ミーティングがあった模様。
 そして昨日、開幕した東京モーターショー2017に行ったら、ポルシェブースに実にミントな356が。このショーのために、ポルシェミュージアムから空輸されて来たそうです。いいなあぁぁ!

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スクガラスは、スク硝子?

 スクガラス豆腐です。〝スク〟はアイゴの稚魚、〝ガラス〟は塩漬けのこと。もう三十年ほど前、那覇ではじめて見かけた時は、硝子瓶にあまりに綺麗にスクが詰められていてたので、スク硝子なのか? 民芸的な土産もの? と勘違いしました。
 夏の味がします。秋も暮れつつあるいま頃食べると、少々切ない塩味です

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中尊寺にて

関山 中尊寺岩手県西磐井郡平泉町)を歩いていたら、弁財天堂阿弥陀堂の間の細い路地の向こうに、気になる朱いものが。弁財天堂の池を左手に歩み寄ると、ダットラ(Datsun truck)の消防車でした。中尊寺特設消防隊とあります。1970年代の終わりにデビューした720系の4ドアダブルキャブ仕様ですね。
 このダットラ、1984年に公開された角川映画『メイン・テーマ』にも出演、森田芳光監督の青春ロードムービーに白いダットラが映えていました。松本隆作詞、南佳孝作曲で、主演の薬師丸ひろ子が歌った同名主題歌が良くて、たしかEPレコードを今でも持っています。それにしても中善寺ダットラの風合いはなかなかのもの。もはや御神輿に近づいており、参拝客にも人気です。その傍らで、火除けのダットラ御守りとか売ってたら、欲しいかも

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ウミネコとペタシ

いつものように材木座海岸を散歩していたら波打ち際の向こう、鯔(ぼら)でしょうかぴょんぴょん魚が飛んでいて、朝日をキラキラ跳ね返しています。それに心惹かれたのかウミネコがやってきて、波打ち際のこちらに着水。どうしたものか、と思案しているよう。その向こうにはサップ(Stand Up Paddleboard)が一艇。
 いつも思うのですが、このサップが沖を行くのを見かけると自分は谷岡ヤスジ先生のキャラクター、ペタシを思い出します。 ペタシ、ペタシの足音で登場する、腰巻をまとっただけの放浪の哲学者です

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ヘルメットを脱いで

二輪免許取得は1970年代後半で、当時すで最高速規制が40km/hを超える道路ではヘルメットの着用が義務化されていました。免許を取ったら停学、バイクに乗ったら退学というむさ苦しい高校に通っていた身としては、この規制は顔バレ対策にむしろ好都合。でもあの当時は、観光地で景色が良かったりすると、ヘルメットを腕にノーヘルで爽快感を味わうライダーも多かった。ばったり出くわしたパトカーにも、短くサイレンを鳴らされ「ヘルメット!」とマイクでがなられるくらいで済んでいたような。だから高校生の自分にとって、ツーリング先でヘルメットを脱いで走る時の爽快感、開放感には格別のものがありました。
 1980年代の終わりにミラノ郊外のモトグッチ(MOTO GUZZI)で広報車を借りてフィレンツェまでツーリング取材した際も、ノーヘルを注意されました。夕方の渋滞でカメラマンが乗った取材車とはぐれてしまい、旧市街の迷路にハマり、そのうち冷え込み妙にシールドが曇るのでヘルメットを腕にかけて走っていたら、アルノ川に架かるポンテ ヴェッキオ(Ponte Vecchio)橋入口で、バイクを降りようとしていた警官に遭遇。「そのヘルメット、被りなさい」と手振りで怒られました。ああ、助かった、と傍らにバイクを停めて事情を話すと、パスポートチェックの後、メモにあるホテルまで先導してくれました(もちろん、サイレンを鳴らしながら!)。別れ際、警官は「良いバイクだね」とニッコリ。走り去る彼が乗っていたのが、BMW(たぶんK75)だと気づき「そういうものか?」と思ったこと、妙によく覚えています

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人類の孤独ざる盛り

夕暮れ時にショッピングモールを歩いていて何か視線めいたものを感じ、ふと見ればそこにあった食品サンプルのひとつが自分の目を捉えて離しません。空腹ではなかったので反応したのは食欲では無く、自分のなかの別の何か。
 宇宙規模的な、2017年の孤独がそこに配列されていました。『人類の孤独ざる盛り合わせ』です。片岡義男さんの小説に『誰もがいま淋しい』というタイトルがあったこと、ふと思い出しました。これで980円だそうです。値段すらも孤独です

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鎌倉の鈴虫

鈴虫寺といえば京都 妙得山 華厳寺が有名ですが、自分にとっては北鎌倉 円覚寺です。北鎌倉駅あたり、横須賀線円覚寺境内を横切っていて今時分の夜は、北鎌倉駅に着き電車のドアが開くと、驚くべき音圧の虫の音。ほろ酔いでうたた寝などしていると、目が覚めます。
 今朝、鎌倉の下馬交差点を渡っていたら、ちょうど鎌倉女学院の生徒たちの通学時間で、警官が交通整理をしていました。その警官が鳴らす笛が、鈴虫っぽい音色だったので、「さすが鎌倉」と感心。でもよく見たら音はすれど、誰の口にも笛がありません。それは笛の音を模した、携帯電子ホーンなのでした。信号の変わり目、ちょっと急かすようピッ、ピッ、ピピッと鳴らすのも、いまやデジタル。諸行無常の響きあり

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O MO TE NA SHI

自分が最初に朝食のご飯を部屋ごとに炊き分けているのを取材したのは湯河原温泉の石葉(せきよう)という旅館でした。前夜にお客さんから言われた朝食の開始時間にあわせ、それぞれのご飯をいくつものカセットガスコンロに載せた釜で炊きあげていました。火加減の調整がシビアで、かなり調理場は慌ただしかった。
 写真は別府温泉の花べっぷという旅館で目撃した、自動個別釜炊きマシーン。なんだかアートです。開催中の現代アート展『ヨコハマトリエンナーレ -2017- 島と星座とガラパゴス』会場にあっても、違和感なく見てしまいそう。タイトルは『O MO TE NA SHI』かな。

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ぱんちょうの華さん(仮名)

豚丼の名店『ぱんちょう』は帯広駅(北海道帯広市)前にあります。豚丼のグレードが高い方から華、梅、竹、松となっているのは、店の創業者、阿部秀司さんの愛妻の名が梅だったから。松竹梅とはけしからん、梅が一番上等だろう、ということですね、いい話ですね。その日、自分の豚丼をテーブルに置いてくれたのは、お年をちょっとだけ召した割烹着姿の女性で「蓋はそっと上げてください。豚肉がくっついていることがあり、剥がれて落ちることもありますので」と名台詞。「もしかして梅さんですか?」と聞いてみたら「いいえ、先代はもう亡くなりました」とのことでした。
 蓋をそっと開けると、そこには素晴らしい景色が広がっています。ちょっと刺激的なので、今回は写真を豚丼到着前のものに自主規制。食べながらメニューを眺めていて、梅の上に華があるのは、さきほどの女性が華さんだからでは? と新たな疑問が。お会計の担当も華さん(仮名)だったので「もしかして、お名前は華さんですか?」と聞くと「いいえ。全く別の名です」と微笑。調べたら、華さん(仮名)は、創業者ご長女の幸子さんでした。梅の上の華はもともと特盛りを略した「特」だったのを、女性も注文しやすいよう「華」に改名したとのこと。自分的には「幸」がいいと思うのですが。それにしてもぱんちょうの豚丼は蓋から絶妙にはみ出していて、とても艶めかしい。ゆっくり外せ、というのも色っぽいし。やっぱり写真掲載は控えておきましょうね

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ボストン夕景

外国滞在中、ああここは日本ではないのだなぁ、と実感するのはどんなときですか? 自分は海辺の景色を見たときです。本来、自由への玄関であるはずの海辺が、日本はいまいち息苦しい。
 写真は米東海岸、ボストン(Boston, Massachusetts, USA)の夕景。ヨットやディンキーの勝手気儘な舫い方がいいですね

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くっちゃんのゆきだるま

羊蹄(ようてい)国道と呼ばれる国道5号線を、倶知安(くっちゃん:北海道虻田郡)から余市に向け走り出してすぐ。右手で、ゆきだるまが微笑んでいました。『農産物直売所くっちゃんマルシェ』の屋根の上です。真ん中のお子さんの、楽しげな体の傾きがたまりません。手もパーだし。右側はお母さん? 水色の眼は、広い大地を見続けた虚無ゆえでしょうか。
 残念ながらマルシェはお休みでした。北海道では既に収穫の秋が始まりつつあり、帰路の荷物に重量制限のある飛行機利用者には、ジャガイモとか、メロンとか、目の毒です。きのこ王国とか、ついついトマトやとうきびを手にしたりして、まじヤバい。そんな、せちがない煩悩とは無縁なのでしょう。この3人、ほんとうに楽しげです

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圏外への旅

フェリーの旅はいいものです。乗船して移動しているのだから、旅の只中なのに、のんびりと過ごせます。あの、とりあえず圏外だし何もすることないし感は、海上を行くフェリーならでは。写真はスオーナダ(周防灘)フェリー乗船中に撮りました。島も海も和風だと、船すら和風に見えるから不思議です。
 いま一番気になっているフェリーは宿毛港(高知県宿毛市)と佐伯港(大分県佐伯市)の間、78kmを3時間10分で結んでいる宿毛フェリーです。1000tの『ニューあしずり』一隻で1日3往復しています。10月頃に、オートバイに跨がって乗船してみたいなあ

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エニワン エルス

 キャデラックCTSのメーターは12.3インチのクラスターパネル。スピードメーターの右側はカラー液晶のDIC(ドライバーインフォメーションセンター)とのこと。自分のiPhoneApple CarPlayにコネクトさせ、音楽を聴きながら試乗していたら、曲が変わる度、DICの画面が切り替わり曲情報とジャケ写が表示されます。音源がSpotifyかTunein Radioか、Amazon Musicだったか忘れてしまいましたが、そうなります。
 そのときかかっていたのは、ブレイク・シェルトン(Blake Shelton)というカントリー歌手のエニワン エルス(Anyone Else)とのこと。運転しながらラジオ的に聴き流す初めての曲でも、瞬時にタイトルとアーティスト名がわかるのは、北米を旅するときとかにいいだろうなあ。その後このタイトルを検索し、1950年後期のシボレー アパッチ(Chevrolet Apache)と覚しきピックアップトラックでのシーンから始まるMVを鑑賞。クルマが優れた情報端末になりつつあると、実感しました

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夜明けのμ

 夏のツーリングは、蝉が鳴き始めるまでが勝負。早朝は道は空いているし、涼しいし。テント泊では夜明けの気配とともにテントを畳んで出発します。
 1987年のヒットに『夜明けのミュー』(小泉今日子)という曲があります。自分はこれを『夜明けのμ』だと三十年間、つまりつい最近まで思い込んでいました。μとは摩擦係数を指し〝夜半から降雨で、路面のμが極端に下がり……〟といった風に使います。夜明け独特のザラッとした淀みや空気がふたりの仲を蝕んでいく的に解釈していましたが、実はミューは『MEW』で、これは猫の鳴き声なのだそうです。夜明けのニャー、ですね。とはいえ三十年の歳月もあり、自分的には断然『夜明けのμ』です。角島大橋(つのしまおおはし:山口県下関市豊北町)にて

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船、家、クルマ、鉄球、戦車、水槽、牛乳。

北海道を走っていると、すれ違うトラック、トレーラーがバリエーションに富んでいます。首都圏においてメジャーなアルミパネルタイプは、むしろマイナー。実にいろいろなものが半ばむき出しで荷台に。建機、動物、藁、丸太、船、家、クルマ、鉄球、戦車、水槽、牛乳……。オートバイで走っていて気づいたのですが、トラックは、車体の美しさと運転マナーの良さがほぼ正比例しています。
 リトル・フィート(Little Feat) の曲に、トラックドライバーを歌ったウィリン(Willin')という名曲があり、北海道を走っていると聴きたくなります。本州、四国、九州では、トラックのBGMといえば『走れ!歌謡曲』ですが、自分的には北海道のみ『ウィリン』です

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