清流越しに
数年前のちょうど今ごろ、郡上八幡に行きました。観光案内にある「清流と名水の城下町、郡上おどりのふるさと」のフレーズに偽りなく、路地の傍らの疎水も美しい町でした。散歩の途中、店先だっただろうスペースにクルマが収まっている姿に、妙に惹かれました。波板ガラスで輪郭がぼけ「清流と名水」越しをモチーフとしたインスタレーションのよう。そういえば昔、TVのアフタヌーンショーとかで、こういったガラス越しに「主人の浮気が原因で……」とか嘆く主婦とか見たな、と。ニューモデルのティーザー露出のようでもあります。妙に意味深ですね。
軒に桜の花飾りが下がっているのは春の例大祭、郡上八幡三社祭が近いから。その夜泊まった宿では、近所で子どもたちが練習しているお囃子が聞こえました。あれ、お囃子が止んだな、と思ったら、今度は胸に沁みいるお寺の鐘の音。柱の時計を見上げれば、午後9時でした。