あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

ダイヤル式の幸福

スペイン、バルセロナの東のビーチリゾート、コスタ・ブラバに滞在したのは十年以上前のこと。リョレト・デ・マルに空き部屋が見つけられず、ちょっと外れの小さなホテルへ。モーテルと行った方が的確なつくりで、部屋もパリ並みの狭さ。サイドテーブルの上の3つのアイテムは当時、ごく当たり前の布陣でした。ところが今や、ことカジュアルなホテルでは、なかなか目にできません。まずダイヤル式の電話機が消え、次に灰皿。電話はプッシュフォン化され、携帯電話の普及で影はどんどん薄くなり、タバコは喫煙所でお楽しみください、が基本です。そして瓶入りのミネラルウオーター。これもペットボトルに駆逐されました。今やこの3点は、プレミアムアイテムです。アッパーなホテルのスペシャルな部屋で邂逅を果たし、フムフム懐かしいなあ、と唸らされたりします。当時この3点はあって当然、ハンガーやシャワーカーテンとなんら変わらぬホテルの部屋に欠かすことのできない備品でした。
 そういえば、東海林さだおさんだったと思うのですが、もうそろそろ便利の追求をやめ、少し時代を戻した方がむしろ幸せなんじゃないか、というエッセイがありました。じーこじーことダイヤルを回して電話するくらいに戻すのがばいいのでは、とあり、大いに納得。十年ちょっと前は、今より幸せだったのかもしれません。

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