あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

思い出のマーニ

いまやイタリアンバイクは、完全リバイバルを果たしドゥカティMVアグスタモトグッチ、ヴェスパに至るまでニューモデルの話題に事欠きません。でもそれは21世紀に入ってからのはなし。76歳だったアルチューロ・マーニさんをミラノ郊外のファクトリーに訪ねた際はこんなバイクをつくっていました。スズキのGSX-R用の油冷エンジンを積んだ、Sport 1200です。世紀の名車、MV AGUSTA 750Sを模したマフラーが艶めかしい曲線を描く、迫力ある1台でした。日本のMVアグスタ好きの為に仕立てたら、北米を始めとする世界中の愛好家の耳目を集めバックオーダーを抱えている、とのこと。「日本は凄い国だね。1967年に鈴鹿GP参戦で行った時はまだのんびりしていた。鈴鹿から東京まで夜汽車だった。それが30年振りに’97年に行ったら。まるで違う国だったよ」マーニさんが運転する外装も内装も黒のフィアット ウーノでランチに向かう途中、助手席で聞いた話です。「ずっとマーニ・グッチをつくっていたのは、完璧なイタリアンモトの製作が目的だったから。このスズキエンジンは4シリンダーでデザインもいい。残念ながら、このレベルの4シリンダーエンジンは、イタリアンメイドでは見当たらないからね」
 現在のイタリアンバイク復興を目にするたび、そのときのマーニさんの寂しそうな横顔、口をへの字にした笑顔を思い出します。そう言いながらも、ブレーキは最小限の運転は、結構アグレッシブでしたが。

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