あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

ドライブ人生劇場

WRCカタルーニアラリーにて、歓待を受けました。SS(スペシャルステージ:公道を閉鎖して設ける競技区間)に見立てた田舎道で、FORDフォーカス RS WRC(年式落ち)の助手席に招かれたのです。六点式シートベルトを締め上げられ、精悍な顔立ちのテストドライバーと握手をしたらスタート。 ああクルマは一瞬たりとも前を向きません! 凄まじく凶暴かつ俊足の、蟹に乗っているよう。ドリフトにつぐドリフトで、存分にシェイクされ、ゴールとなりました。再びドライバーと握手。降りようとしたら、ドライバー側のドアの向こうにライフルのようなもの下げたスタッフが。それは、金属製の松葉杖でした。「この前落ちて、骨折したんだ」と笑うドライバー。確かに彼の左足膝下はギブスに覆われています。ギブスであのドライブか、プロは凄いなと心底震え、びびってしまい「落ちたって、どこから? クルマごと?」とは聞けませんでした。それはエスクァイア日本版のクルマ特集のため、スペイン人ラリー キング、カルロス・サインツを訪ねた時のこと。FORD RALLY SPORTが用意してくれた、テストドライバーによる素敵な余興でした。

 その特集のテーマは「マニュアルシフト(MT)車が面白い」でした。インタビューの最後に、ところでMT車をデートカーとして使う場合、なにか助手席の女性に有効なテクニックってありますか? と聞くと、キングは笑みを浮かべ天を仰ぎ、こう教えてくれました。「足だね。シフトレバーを見るふりをして、まず足が美しいかを確認する。ことによっては手元が滑ったりするかもしれないな(笑)……。やっぱり安心感を与えられなくては。状況に応じた正しいギア選び。そこにはドライバー個人の人格や人生観も出てしまう」。性格ではなく、人格とまで言い切るとは、さすが王様です。

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