あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

その扇風機がふーっとこちらを向いた瞬間!

ある夕暮れのこと。ツーリング帰りに高速道路にのろうとしたら、その先で事故渋滞発生中の表示。次のICまで迂回することにして、再び山間の県道に。最初はクルマの連なりの中にいたのですが、一台、また一台とどこかへ行ってしまい、棚田のワインディングにさしかかったあたりで、自分のバイク1台きりとなりました。蛙がうるさいくらいに鳴いています。この道でいいのかな、なんだか道幅も狭くなってきたし、信号も標識も無くなったなあ、と疑心暗鬼になり始めたそのとき、田んぼの向こう、一軒の農家が目に入りました。蛍光灯に照らされ妙に明るい居間の中央に、大きな座卓があり、誰もいません。扇風機だけが首を振っています。その景色が過剰なまでに静かで、胸騒ぎを覚えました。夏の盛りに網戸もせず、灯りも扇風機もつけたまま誰もいないのが、妙です。だいぶ距離があったのですが、その扇風機がふーっとこちらを向いた瞬間、冷気が届いたようにゾクっとしました。
 結局ちょっと迷っただけで、高速への取付道路に出ることができ、予定通り帰宅。でもこの季節になると、あの家の妙に明るい無人の居間で首を振っていた扇風機のことを思い出します。あの家、実在するのかなあ

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