あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

バーリ空港を走る彼女

 ボーディング・ブリッジが切り離され、機体が動き出しふと見ると、職員の方が横に並んで手を振りお辞儀までしています。海外では見た覚えがないので、あれは日本独自の慣習でしょうか。窓外に手を振る人を見ていて思い出すのは、以前イタリアのバーリ空港での出来事。取材を終えミラノに戻り、その日のうちに成田行き搭乗の予定でしたが、バーリ発便が遅れ、成田行きに間に合わない可能性が出てきました。フライトはどちらもアリタリアだったので、カウンターで確認。担当してくれた女性は親身にいろいろトライしてくれ、だいぶ時間はかかりましたが、一応その日のミラノの宿と次の日の成田便の席を確保するよう働きかけてくれ、ミラノ・マルペンサ国際空港の担当者名のメモもくれました。
 そのうちミラノ行きが飛ぶことに。動き出した機上の人となりヤレヤレと窓の外を眺めていたら、カウンターの彼女が飛行機の横を走っています。えっ? と思ってよく見れば、手に掲げているのは自分の取材ノート! カウンターに忘れたんだ!! と、そのとき飛行機は停まりタラップが架けられ、ノートはタラップを駆け下りたキャビンアテンダントの手に。その後機内では「このノートの持ち主はいますか?」となり、手を上げた自分。ちょっと勇気がいりましたが、幸い隣の席の方が「ハハ、コングラチュレーション!」と混ぜっ返してくれたので救われました。もう十年以上前の話です。その頃のアリタリアは、忘れ物でも停めてくれました。アルマーニのグレーのスーツの彼女の、ジェット機を追いかけ停めようと走るフォームは、たいへん美しいものでした

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