あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

なんでもない一日

 中学生時代、テリー・サバラス(Telly Savalas)がNY市警察第13分署のデカ長を勤めた(演じた?)ドラマ、『刑事コジャック』が好きで、欠かさず見ていました。深夜枠再放送での復習も欠かしませんでした。一番好きな台詞は、びびりで臆しがちな新米刑事に怒鳴ったひと言。「お前さん、保証が欲しいんだったらデカなんかやめちまえ! 冷蔵庫でも買うんだな」です。一番好きな回は、なんでもない一日の回。刑事ドラマですから大抵何か事件が起きてマンハッタン南を管轄する第13分署は慌ただしいのですが、その回では本当に何も起こらない。例によって廊下のサンドイッチの自販機が壊れたり、丸刈りコジャックが「どうだい、今日の髪型はキマってるだろ」とうそぶいたり、スタブロスが鉢植えに話しかけたりしますが、それだけで何ら事件は起こらず、淡々と終わってしまいました。これには虚を突かれたというか、シビレました。刑事コロンボではあり得ないオシャレ感です。自分は波のおだやかな晴れた材木座海岸に出ると、なぜかこの回のことを今でも脈略なく思い出します。
 中学生の頃見たのは日本語吹き替え版で、コジャックの声は森山周一郎さん。テリー・サバラス以上にコジャック的で全方位隙が無く、とても素敵でした。彼の吹き替えにより日本で人気を得たことを知ったテリー・サバラスは「もし森山周一郎に英語吹き替えが必要になったら、俺がやる」と言ったとか。果たしてジブリ作品『紅の豚』における、深紅の飛行艇を操る豚のポルコ・ロッソの声が森山周一郎さんだったのですが、同作品の全米公開は2003年のこと。テリー・サバラスは1994年1月に逝去されたので、それはかないませんでした。残念。ちなみに『紅の豚』英語版の吹き替えはマイケル・キートン(Michael Keaton)で、同フランス語版はジャン・レノ(Jean Reno)だったそうです。なんか、ふたりを足すとテリー・サバラスになりそうな気もします

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