あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

干し草にまみれてよォ

アリゾナをクルマで走っていたら、路肩で干し草のブロックをトラクターに移していました。トラクターの陰に、ビリー・ボブ・ソーントン(Billy Bob Thornton)が潜んでいそうに思えるのは、コーエン兄弟映画の見過ぎでしょうか?
 TVドラマ版のファーゴ(FARGO)での怪演が印象的なビリー・ボブ・ソーントンは、今話題のアンジェリーナ・ジョリーAngelina Jolie)とかつて結婚していたそうです、とこれは余談でした。時折乾いた風に干し草が舞います。♪ 藁にまみれてよォ〽 と歌ったのは三橋美智也(達者でナ)さんですが、干し草にまみれるのはカントリー&ウエスタンが合いますね。ちょっとジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)が聴きたくなりました

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光る山

朝から天気が目まぐるしく変わります。強まったり弱まったり雨は続き、時折思い出したかのように日が差します。それも大してながくは続かず、すぐに空は雲で閉ざされます。クルマで峠越えの途中、フロントガラスに雨滴が無くなりワイパーを止めると、急に右サイドが眩しくなりました。水を含んだ緑が暗い雨雲をバックに輝き、一瞬だけ山が光りました。
 次のカーブを抜けたらまた雨、しかも豪雨! ワイパースイッチをマックスにするのは、今日何度目でしょう。ついさっきの山の眩しさが、もはや幻です

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カーレース

足立区のとある団地の一角で見かけました。昼頃だったのでコンセントは抜かれ、スタンバイ状態。よい子の下校を待っています。カーレースの舞台は大胆にも東名・名神高速道路。スタートは東京インター、ゴールは神戸インターという公道レース、いわゆるキャノンボール (Cannonball) ものですね。途中〝落とし穴〟はふたつ。「エンジントラブル」とともに「スピード違反」があるのがシュールです。「スピード違反」の傍らに描かれているのは、日産の5代目C210スカイライン、いわゆる〝ジャパン〟セダンのパトカーっぽいですね。

 プレイしたかったのですが、店の奥の初老の女性に「やりたいんで電源入れてください」と言うのを照れ、つい「これ、写真撮っていいですか?」とカッコつけてしまいました。神戸まで、行きたかったなあ

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贅沢な飯田線

クルマを走らせていたら伊那市駅飯田線@長野県)近くの踏切で、遮断機が降りました。単線でしたが予想に反した電車の立派さに驚きました。豊橋駅(愛知県豊橋市)と辰野駅(長野県上伊那郡辰野町)の間、195.7kmを結ぶ飯田線は、天竜川に沿って走る、とても眺めのいい路線です。40年ほど前には流線型の湘南電車を惚れ惚れ眺めたこともありました。
 だいぶ前に全線乗りましたが、そのときは6時間ほどかかりました。渓谷美を眺めながら195.7kmを6時間ですから、贅沢といえば贅沢です。いまは? と調べたら、10時42分に豊橋駅を出る岡谷行きの辰野駅着は17時18分です。所要時間は6時間36分! 贅沢を忘れてないなあ

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パスタと丼

パスタと丼(どんぶり)、近いものがある気がしませんか? 具と炭水化物の比率や絡め具合が似ています。パスタとご飯、フォークと箸の違いこそあれ、ひとつの器に完結させるその宇宙観は同一と見ていいでしょう。写真のひと皿は南仏、ロクブリュヌ カップ マルタン(Roquebrune-Cap-Martin)でいただいきました。ル コルビジュエの夏の家近くのレストランでたのんだ、地中海を眺めながらの海鮮丼ならぬ、海鮮クリームソースのパスタです。

 ところで丼というと、思い出す逸話が。たしか女優の杉村春子さんのエッセイか自叙伝にあった、志村喬(しむらたかし:七人の侍でいえば島田勘兵衛)のちらし寿司の話です。彼がひとり黙々と、ちらし寿司の具を丼の蓋に移していたので「何してるの?」と聞いたら、こんな答えが。「ちらしは好きなんだが、僕は武士の家の出だからご飯の上にものを載せて食べてはいけないと躾けられたのでね、その癖が抜けなくてね」 ……カッコイイですね! そのあたりはパスタと丼、ちょっと違うかも

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夏だけの橋

夏の海水浴シーズンだけ材木座と由比ヶ浜を分かつ滑川に、橋がかかります。足場にあるような板張り、割った丸太を針金で固定した手すりと、素朴なつくり。ボードウォーク (boardwalk)的な、歩いて渡る橋です。これが架かると夏が来た気がします。材木座(写真左手)から由比ヶ浜(同右手)に渡った先には、これも夏だけのライブハウス、音霊 OTODAMA SEA STUDIOが。今年は水曜日のカンパネラが良かった。エンディングはなかなか衝撃的でした。

 朝散歩していたら、その橋を撤去中。ちょうど手すりが外されたところでした。この橋が無くなると、鎌倉の夏は終わります。見上げればなるほど、秋の雲です

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夜の日替わり丼

東北大学工学部を訪ねた帰りに、青葉山キャンパスの一角にある学食、Komorebi Cafeに寄りました。券売機で「日替わり丼(八宝菜ご飯)」と「サラダ」の食券を購入。併せて五百円ちょっとでした。営業は午後八時までで、入ったのは午後七時過ぎ。ガラス張りの店内は人影もまばらで、広い厨房にも女性がふたりきり。学生とおぼしき客は皆ひとりで、間隔を置いてテーブルにつき照明は落とされていて〝孤独の集い〟のよう。

 やがて番号を呼ばれ、差し出されたトレイには見事な盛りの丼。漬け物と、竹の子、南瓜、ニンジンの煮物付きでした。サラダも直球な盛り付けで、いかにも学食です。その日はクルマで来ていて、食事が済んだら仙台宮城ICから東北自動車道にのり帰る予定。450kmくらいあるはずです。たぶん首都高のどこかで日付が変わるのだろう、などと孤独とともに噛みしめていたら、いつの間にか丼は空になっていました、ご馳走さまでした

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青々と晴れた海

運河の街、小樽(北海道小樽市)をクルマで走っていたときのこと。祝津(しゅくつ)から石狩湾を左手に市街に入り、小樽運河と小樽港を結ぶ水路にかかる橋を渡ったら、右手奥にホテルノルド小樽のドームが見えるあたり、その手前の角地に尋常ならざる数のウミネコが。空き地はコロニーと化していました。視線を道に戻せば、灰色のふわりとしたものが、たどたどしい足取りで横切っています。右手のコロニーから、左手の港にむかって、まるで風に吹かれた大きな綿埃のよう。クルマを左に寄せて停め、車道から歩道への段差を登ろうと必死になっているそれに近づけば、ウミネコのヒナでした。やっと歩道に這い上がったヒナは、海と歩道を分かつフェンスの下をくぐり、その淵でやっと止まりました。よく見れば、頭といい体といい、鋭いくちばしでつつかれたと思われる跡が無数にあります。海をじっと眺めているので、すくい上げ戻したものかどうかコロニーを見に行けば、そこには血まみれでもう完全に息絶えている雛が三体。事情が飲み込めました。綿埃のようなヒナは禍を逃れ、自らコロニーを後にしたのでしょう。

 淵に立つヒナのもとに戻れば、まだ青々と晴れた海をじっと見ていました

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木曾は山の中

木曾は山の中です 誰も来やしません♪ と歌ったのは1974年の葛城ユキさんですが、42年後の夏の奈良井宿は人(観光客)でいっぱいでした。写真は、夕立に見舞われた後の午後6時前。中山道から一瞬人影が消え、雲を纏った山が迫ってきました。
 木曽はたしかに、山の中でした

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オーシャン フロント

カリフォルニア州ビッグ サー(Big Sur)のリゾート、ポスト ランチ イン(Post Ranch Inn)については以前も書きましたが、また思い出したので。先日、首都圏近郊のリゾートホテルを取材中、オーシャン フロント、オーシャン ビューとしている部屋の眺めがあまりに、その語感とかけ離れていたからです。テトラポットや防波堤で覆われた海は「オーシャン」ではない気がします。

 写真はポスト ランチ インにあったクリフ ハウス(Cliff House)のテラス。左手前は風呂ですね。ポピーのような花の向こうは300mの断崖。それゆえ太平洋が広く一望できます。呆れるくらいに完璧なオーシャン フロントでした

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台風とヘビ玉

台風が近づいたり遠のいたりすると不思議な雲が湧きます。海に出て見上げればいつか見た質感の雲、ヘビ玉でした。それは昼間楽しむ花火で、小さなマグネットのような円柱形の上面に着火すると、シューッと音を立てながら燃えカスが立ち上がり、煙の中とぐろを巻くという不可解な花火(ほんとうに花火?)です。
 グロ感満点で大人には概ね不評でした。それゆえ、ちょっと隠れて楽しむ花火だった。するとさらに楽しく、なまめかしい火遊びに。火をつけて楽しむから花火にカテゴライズされていましたが、明らかに異なるメッセージを放っていましたね。割と好みだったこと、雲を眺めつつ思い出しました

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歌うも舞うも

神奈川県逗子市に住んでいるのですが、今年は台風や前線の通過とお盆が微妙に重なりました。近所では櫓を立て、提灯を吊したものの、雨風で踊れなった町内会もあったよう。残念です。写真は北鎌倉、円覚寺の盆踊り。ここではくじ引きつきの団扇を売っています。団扇にはこう、書かれていました。「歌うも 舞うも 法の声」
 「法の声」は「のりのこえ」と読みます。白隠禅師の「うたうことも舞うことも、なすことすべて、自然と仏法にかなうことになるのである」という教えだそうです。盆踊りにピッタリ!ですね

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道路標識 325の4

まじまじ見ると、ちょっと怖い。歩行者専用を表す道路標識ですが、ふたりのキャラが妙に強い。この標識、欧州でも時々見かけます。48年前にウィーンで開催された「国連道路交通会議」で採択された図案とのこと。しかしその2年後、西ドイツ(当時)のグスタフ・ヴァルター・ハイネマン(Gustav Walter Heinemann)連邦大統領が「誘拐犯を連想させる」と発言。西ドイツ国内では、ちょっとポップな『女性とこども』バージョンに変更されました。当時の佐藤栄作首相は特にコメントしなかったようで、現在も日本では「道路標識 325の4」として現役です。
 それにしても左の男性(たぶん)の左手(たぶん)のクニャクニャ具合が怖い。二人ともつま先が内側に向いているのも意味深です。ロズウェル陸軍飛行場(Roswell Army Air Field)入口、ではなく横須賀の池之端商店街入口にありました

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夏景色

西伊豆(静岡県賀茂郡西伊豆町)は、高校生の頃からの遊び場です。学校に行かず、ミニトレ(YAMAHA GT50)の4速ミッションを駆使し、2サイクル49cc空冷エンジンからの4馬力を頼りに山越え谷越え、よく走ったものです。写真はつい先日、西伊豆町堂ヶ島の先の仁科港枯野公園からの眺め。堂ヶ島洞くつめぐりの遊覧船が、仁科港の手前で弧を描きつつ、ターンしていました。
 遊覧船にサザエさん一家が乗っていても不思議ではないほどに、昭和の風情漂う景色です。変わって、ないなあ

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アブラゼミ

おお、これは近いぞ、といっても落雷ではありません。そこの網戸に油蝉! しかも二匹。あああ、うるさい。決して岩にしみ入ったりせず、脳内ダイレクトに響きわたります。
 二節ほど唸りおえても、満足しなかったのか動きません。ジジッジィーの捨て台詞で、二匹相次いで飛び去るのを期待していたのに。たしか油蝉は夜鳴きするんだよな、と思い出し、網戸を叩くか迷い続ける終戦記念日

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