あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

孤独とスワローズ

 京都府北部の中丹地方のビジネスホテルに着いたら、チェック イン カウンター脇、宴会場らしきホールへの扉が開いていました。何か音が漏れていたので入ってみたら、プロジェクターで甲子園球場阪神×ヤクルト戦を生中継しています。そうだ、ここは関西圏だ、と気づかされましたが、誰もいません。テーブルでの持ち込み飲食OKとの張り紙も。その日は昼から食べ物取材が続いたので、ことさら食事に出かける気にならず、風呂に入ってからビールを買って、再び宴会場へ。やはり誰もいません。
 9回の表、ヤクルトは1点差まで迫ったところで力尽きました。7連敗だそうです。結局、最後まで宴会場でひとりでした。自分はヤクルトファンでも阪神ファンでも(そもそもプロ野球ラヴァーでも)ありませんが、なんだかがっかりしました。気がつけばひどく孤独でした

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プロかな?

 材木座海岸(神奈川県鎌倉市)の砂浜に、作品がありました。上半身が波で消されてしまったため、残念ながらご尊顔を拝見できません。そもそもどこまで描かれていたのかもわからない。角度を変えて二度、三度と見たら、右足のふっくらとしたラインが少年のようでもあります。
 そのうち、すごく上手いようにも思えてきました。プロかな(なんの?)。

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繁栄稲荷大明神様

 いつもの散歩コースで、光明寺鎌倉市材木座)へ。境内に入り本堂、網引延命地蔵 繁栄稲荷大明神、開山堂と参拝するのですが、繁栄稲荷大明神にこのお方が。近づいても動かないので事件ですか、事故ですか、と一瞬身構えましたが、息でお腹がわずかに動いていました。鈴を鳴らさず手早く手を合わせ、頭を上げると、気配を感じたのかむこうも頭を面倒くさ気にあげていて、視線がモロに合いました。
 「なんだよぉ」と目が言ってました。わるいわるい、と後退れば再び目を閉じゴロンと。後退りながら御影を1枚撮らせていただきました。たしかにそこは木陰で、とても良い風が吹いています。商売繁盛よろしくお願いします

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なんでもない一日

 中学生時代、テリー・サバラス(Telly Savalas)がNY市警察第13分署のデカ長を勤めた(演じた?)ドラマ、『刑事コジャック』が好きで、欠かさず見ていました。深夜枠再放送での復習も欠かしませんでした。一番好きな台詞は、びびりで臆しがちな新米刑事に怒鳴ったひと言。「お前さん、保証が欲しいんだったらデカなんかやめちまえ! 冷蔵庫でも買うんだな」です。一番好きな回は、なんでもない一日の回。刑事ドラマですから大抵何か事件が起きてマンハッタン南を管轄する第13分署は慌ただしいのですが、その回では本当に何も起こらない。例によって廊下のサンドイッチの自販機が壊れたり、丸刈りコジャックが「どうだい、今日の髪型はキマってるだろ」とうそぶいたり、スタブロスが鉢植えに話しかけたりしますが、それだけで何ら事件は起こらず、淡々と終わってしまいました。これには虚を突かれたというか、シビレました。刑事コロンボではあり得ないオシャレ感です。自分は波のおだやかな晴れた材木座海岸に出ると、なぜかこの回のことを今でも脈略なく思い出します。
 中学生の頃見たのは日本語吹き替え版で、コジャックの声は森山周一郎さん。テリー・サバラス以上にコジャック的で全方位隙が無く、とても素敵でした。彼の吹き替えにより日本で人気を得たことを知ったテリー・サバラスは「もし森山周一郎に英語吹き替えが必要になったら、俺がやる」と言ったとか。果たしてジブリ作品『紅の豚』における、深紅の飛行艇を操る豚のポルコ・ロッソの声が森山周一郎さんだったのですが、同作品の全米公開は2003年のこと。テリー・サバラスは1994年1月に逝去されたので、それはかないませんでした。残念。ちなみに『紅の豚』英語版の吹き替えはマイケル・キートン(Michael Keaton)で、同フランス語版はジャン・レノ(Jean Reno)だったそうです。なんか、ふたりを足すとテリー・サバラスになりそうな気もします

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北陸自動車道の太郎さん

 北陸自動車道を走っていたら前方やけに目立つ人影が。トラック後部にいるのは安全太郎さんです。路面工事の安全を確保するガードマンロボットの彼は昭和45年(1950年)生まれ。当初は生誕当時の流行語「アッ!と驚く為五郎(ためごろう:ハナ肇さんですね)」にちなんだ「安全為五郎」のコードネームで開発され、製品化にあたり安全太郎に改名したとか。まあ、後続車への安全運転喚起もあってこの乗り方なのでしょうけれど、視界に入った瞬間ドキっとします。
 その先の刀根トンネルは高速道路にしては珍しく、全長580mなのに中が右カーブ、左カーブのS字になっていました。トンネルを無事出てから、太郎さんが「気をつけてね」と言っていたのかも、と気づきました。彼は移動中も仕事を忘れないタイプのようです

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引間城跡出世確約三公像

 浜松にある元城町東照宮静岡県浜松市中区)にある二公像の解説ボードにあった写真です。二公とは徳川家康公と豊臣秀吉公で、東照宮の置かれた地は引間(ひくま)城跡。この城は二公ゆかりの城で、秀吉は引間城を整備した飯尾氏の配下である松下氏に、当地で16歳から3年つかえていたそうです。武士になりたくて引間城を訪れ猿のまねをして栗を食べ、それがウケ取り立てられたとのこと。家康が最初に居城としたのもこの城でした。それゆえ、出世にあやかれるパワースポットとして人気に。

 現在は、二公像の間に立って写真が撮れるようになっています。ボードに撮影見本的なかわいい女の子の写真があるな、と思ってよくよく見れば上原ひろみさんでした。そうか、彼女も浜松出身で確かに出世されてますね。……ちなみに元城町東照宮の近くには『やまと』という居酒屋があり、ここの600円の刺身定食がとても美味しかった

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不死鳥歌劇場に藤原義江は立ったのだろうか

 ミラノのスカラ座、ローマのオペラ座と並ぶイタリアを代表する歌劇場、ヴェネツィアフェニーチェ劇場(Teatro La Fenice)です。17世紀後半に竣工し、1996年の火事(今のところ最後の火事)で消失しましたが16年前に再建されました。このアングルからだと、とても築16年の築浅物件とは思えません。そこには不死鳥(劇場名のフェニーチェは英語ではフェニックス、不死鳥の意)の凄みすらあります。
 自分としては、藤原義江はかつてこの舞台に立ったのか? がちょっと気になりました。彼は1934年(昭和9年)に、ビクターよりレコード『ヴェニスの想い出』を出しています。藤原は1920年大正9年)3月、日本からイタリアへオペラ修業の旅に出発。『漂泊者のアリア』(古川薫著)で描かれた、その旅立ちのシーンは実にドラマでした。ちなみに彼は1976年に77歳で没したのですが、晩年はホテル側の厚意で帝国ホテル内の専用室に居住。全盛期に同ホテルを贔屓にしていたことへの御礼として、財産を使い果たした彼の面倒を生涯みたそうです。昭和の香りも芳しいエピソードですね

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コンテンポラリーな海鮮丼

 勝浦(千葉県勝浦市)でいただいた丼です。その日は風が強く、名物の朝市が早々店じまいモードとなったため『うおすい』という魚屋さん奥のテーブルで朝ご飯にしました。
 まぐろとイカの紅白が、目出度い感じ。斬新です。そういえば調理場もフロアのスタッフも皆、若い。コンテンポラリーでちょっとパンクですらある海鮮丼。食べたら普通に美味しかった

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ああ憧れのアエロメヒコ航路

 久しぶりに成田国際空港を利用し、搭乗ゲートから搭乗機までバスに揺られていたら第1ターミナル 北ウイング に見慣れぬ機体が。モノトーンも凜々しいアエロメヒコ航空(AERO MEXICO)です。この2月13日からJALとの共同運航として、成田 - メキシコシティ(Mexico City)便が毎日就航しているとのこと。成田発は14:25で、フライト時間は12時間40分だそうです。
 あれに乗れば半日後には、あのフリーダ カーロ美術館 (Frida Kahlo Museum)に行けるのか……と、おおいに心惹かれました

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わく子さん、こんばんは。

 夕景が素晴らしく、その後の移動距離も考えず撮影にやや粘り過ぎてしまい、その日のホテル着は23時過ぎ。部屋の扉を開けてルームキー短冊を壁面の穴に差し、灯りがともると、そこにわく子さんが待っていました。なんだか凄いネーミングです。女性の服を褒めてもセクハラ注意とされる昨今、微妙な気もしますが、正直ちょっとなごみました。
 以前、エスクァイア日本版の家電特集の取材で、横須賀に暮らす米兵がどんな家電を使っているのか取材した際、彼の部屋には日本製の全自動洗濯機があり「愛妻号」の銘が。それはなんて書いてあるの? と持ち主に聞かれ「Good Wife」という商品名だよ、と答えたら、本当か? と三度聞かれたうえで、大爆笑に。インタビューが5分ほど中断したことを思い出しました。その晩は、わく子さんを意識しながら旅の一夜を過ごしました。わく子さん、英訳がちょっと難しいですね

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猫の背洞穴と、毘沙門居残り佐平次と

 バイクに乗ろうかなと、よく向かう先に城ヶ島(神奈川県三浦市)があります。城ヶ島ではたいていユルく島一周を歩きます。写真は島中央部南端の海蝕洞穴、馬の背洞門、の横の小さな洞穴です。馬の背洞門は琵琶湖を左右反転したようなフォルムですが、こちらは山中湖を上下反させたよう。馬の背のちょっとグランドキャニオンな異景感に最初は目を奪われましたが、最近はこちらの洞穴が気になります。穴からのぞく水平線は、なぜ眩しいのでしょう。自分がネーミングライツ権を得たら「猫の背洞穴」にしようと思います。
 城ヶ島に向かう際はたいてい、三浦海岸から神奈川県道215号線を南下します。交通量も少なく適度なアップダウンもあり気に入っているのですが、ときどき江奈湾干潟を過ぎ毘沙門トンネルを出た先でスピード違反の取締りをしているから要注意。トンネルを出たところでスピードを計測し、違反車を毘沙門湾の側道に誘導するのですが、昨日はダンプがその間でハザードを出して停まっていました。たぶんスピード計測に気づき、誘導場所に行くのを拒んでいるのでしょう。居残り佐平次のようでした

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リアルト橋の先、アドリア海の真珠魚市場にて

 時差ボケを抱えながら早朝、ヴェネツィア(Venezia, Italy)のホテルを出てリアルト橋(Ponte di Rialto)を渡ったら 魚市場がありました。並んでいる魚の様子が、だいぶ違います。じゃあ、アドリア海の真珠(ヴェネツィアの別名ですね)っぽいか? というと、そんな感じでもなく適度にグロく、やはりヌラヌラしています。捌き方の違いも大きいようです。随所に配された葉物野菜が「魚屋じゃないよ、海産系料理素材屋だよ」感をかもしています。
 魚の種類や捌き方、並べ方こそ違いますが、市場の雰囲気は八戸市営魚菜小売市場や三浦市三崎水産物地方卸売市場魚市場のそれと、それほど変わりません。スカンピ(scampi)とか美味しそうだけど、持って帰れないしな、と思っていたら外れのほうに生ハム店が。滞在中に食べる分を数種類買ったら、二枚のトレッシングペーパーの間に薄く削いだそれを挟み、紙でくるくる巻いた筒状のもの何本かになりました。一見クレープのようで、そのままがぶっと食べたくなる感じです。手にした瞬間、時差ボケのなか大波のように猛烈な空腹感が押し寄せてきました

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静岡駅前葵タワーにて

 静岡駅前に葵タワーが出来たのが9年前。地下1階から2階に戸田書店が入っていて、2階にはスツールも置かれています。写真は3階にある静岡市美術館のエントランスにあるカフェスペース。駅前交差点を眺めながら、ひと休みできます。静岡で時間ができると、戸田書店の2階か、このカフェで過ごします。
 ちなみに自分的静岡市美術館企画展ベスト3は、「ハンス・コパー展 —20世紀陶芸の革新」(2011年4~6月)、「没後20年 ルーシー・リー展」(2016年4~5月)、そして「没後150年 歌川国芳展」(2011年7~8月)ですね。2016年秋の「スタジオジブリ・レイアウト展」もここで観ました、よかったなぁ

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盛岡城丸の内で「鳩オミクジー」

 盛岡城跡丸の内にある櫻山神社で、鳩サブレー缶に会いました。なぜ「オミクジー」なのでしょう。「サブレー」の音引きにひっぱられた感じ? 缶は2015年まであった20枚入缶(税抜 2100円)か、28枚入缶(同 3000円)と思われます。豊島屋のロゴは覆われていません。日々豊島屋逗子店前を行き来しており、手土産に鳩サブレーを携えることも多いので、不意の再会にドキッとしました。
 鳩サブローもたぶん、驚くと思います

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昇仙峡、55歳のモーター君

 昇仙峡(山梨県甲府市)を渓流沿いに上がり、仙娥滝(せんがたき)を過ぎてしばらく行くと、昇仙峡ロープウェイがあり仙娥滝駅から山頂パノラマ台駅間、1,015mを結んでいます。そのパノラマ台に上がったところに、モーター君がいました。
 1964年(昭和39年)の開通以来、24年にわたってゴンドラを動かし続けた直流モーターだそうです。ご苦労様です。なぜ君づけなのかは、一切解説ナシでした。 モーターは男の子キャラ? それともちょっとタメっぽい感じ? 野ざらしだったし。……あらゆるものをキャラ化する観光地ルールに退役後も晒されています。実直そうなフォルムに親しみが湧きましたが、君づけはちょっとなぁ、初対面だし

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