横浜駅 22時24分
東急東横線から乗り換え、横浜駅で下りの横須賀線を待っていたら、東海道線下りホームにサンライズ瀬戸・出雲がやってきました。寝台電車ですね。思わずiPhoneで、流し撮り! カメラモードにするのに手間取っていたら電車が動き始め、条件反射的に右手が車速を追っていました。我がことながら撮り鉄だった過去が偲ばれます。
自分が初めて乗った寝台列車が「特急 出雲」だったので、ちょっと懐かしい。まだサンライズには乗ったことが無いので、いつかは、と横須賀線ホームから見送りました。もし入線してきたのが、EF58に引かれた客車編成の「急行 桜島・高千穂」だったら、飛び乗っていたと思います。きっとメーテルが待っているから(笑)
進撃の富士山
鎌倉で国道134号線に出て江ノ島方面に向かっていたら、稲村ヶ崎を越えたところで富士山とばったり出会いました。冬晴れの朝の富士山は巨大です。印象としてはズイっとこちらに歩み寄り、ドカっとあぐらをかいている感じ。具体的には箱根より手前、国府津あたりに居そうな大きさです。海外取材が続いた後、不意にここで富士山と再会したりすると、何かが溢れそうなほどに感無量になったりします。夏のぼーっとした富士山では、そうはならないから不思議です。
以前〝別荘地 鎌倉〟をテーマとした取材で、地元の不動産会社に何件か別荘物件を案内してもらった時のこと。稲村ヶ崎の海見え物件を案内願った際、初老女性の担当者が「えーと、古戦場のサイトウさん(仮名)のとこね」と言っていました。たぶん新田義貞の鎌倉攻め由来の「古戦場」だと思うのですが、そのひと言で鎌倉も古いなぁと実感。調べたら684年前の戦場です。新田義貞も振り返って、この富士山を見たのでしょうか
デブと荒野
米国取材に出かけると自分は太ります。決定的にクルマでの移動時間が長くなり、車中で長時間過ごすストレスで胃は活性化。取材中は外食ばかりで、ハイウエイ沿いのダイナーのメニューにも問題多数。運動といえば、ステアリングを回すか、ウインカーレバーを倒すくらい。間違いなく太ります。なので、空き時間にせめて歩こうとスニーカーを持参。時差ボケで目が覚めた夜明けにモーテルを出て、さてどこを歩こうかと左右を見渡し、その寂寥(せきりょう)に足が停まってしまいました。こんな時間に歩いていて問題ないエリアなのか、まったくわかりません。
かくして部屋に戻って、まずコーヒーを。腹が減ったので、駐車場を横切りフロント棟のドアを開ければ、昨晩受けた説明通り、カウンター前にドーナツが並んでいます。ああ、こりゃもう太るな、とわかっているのに! ……デブ スパイラルな無限ループの渦中、朝からもがく気力も無くしています
おお、グロリア!
自分は出先で古いバイクやクルマを見かけると、大層得をした気分になります。写真は、プリンス グロリア(Prince Gloria)。これが綺麗で、さりとてレストアされた風でもありません。まるで映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でドクが乗っていた、デロリアン(De Lorean)DMC-12のように、1960年代から時空を超えてきて、いま停められたかのようです。これは眼福でした。それにしてもショルダーをグルリと一周したラインがクールです。このテールランプは子どもの頃、超スキだった。
記憶の中の叔父さんに、記憶の中にあるままの姿でバッタリ再会したかのような気になりました。リアサイドには Gloria Deluxe 6、トランクリッド後方右端にはPrince 6のエンブレムが。ちょっと風合いを帯びた筆記体、ゴールドのエンブレムも凜々しく、超絶ステキ。実に得した、なぁ
ようこそ《こけし》
イサム・ノグチの《こけし》です。神奈川県立近代美術館 葉山に昨年やってきました。1951年生まれで、52年に神奈川県立近代美術館 鎌倉で開催された個展で発表され、その後同館の中庭に常設展示されていたものです。2015年に神奈川県立近代美術館 鎌倉が閉館となったので、葉山にやって来ました。あたかも開館時からそこにあったかのように、素晴らしく馴染んでいます。
それを記念して「イサム・ノグチ《こけし》葉山へようこそ!」というリーフレットがつくられました。それが、実像に負けづ劣らずキュート! 近美葉山にいらしたら、ぜひそちらもご覧ください
空港駐車場にて
旅が終わり、いよいよ空港でレンタカーを返却。返却ブースを目指し、空港駐車場の中を走ると、帰国前でやや感傷的になっているからか、停めてあるクルマ、一台一台の佇まいが目に沁みます。写真はサンフランシスコ国際空港(San Francisco International Airport)で見かけたピックアップトラック。1973年から'87年まで15年に渡って生産された三代目のシボレー(Chevrolet) C/Kですね。生産終了から30年となる今でも、よく見かける人気モデルです。けっこうピカピカなのに、手間をかけレストアしただろうに、空港駐車場にポンととめてあるのが粋だなぁ。
空港駐車場の並びは、あたかもクルマの持ち主それぞれの人生の断片が留め置かれかのよう。眺めて楽しいのは断然、アメリカとイタリアですね。それとは対照的に自分は、日本の空港駐車場では(それが地方空港であろうとも)息苦しさを覚えることが、多々あります
とうとう自立を切り出され
米ラスベガスで1月5日に開幕したコンシューマ・エレクトロニクス分野における世界最大の見本市、CES2017においてHONDAは、ライダーがいなくても自立する2輪実験車、Honda Riding Assistを世界初公開しました。ASIMOに代表されるヒューマノイドロボット研究で培ったHonda独自のバランス制御技術を二輪車に応用。ライダーが乗っていても、乗っていなくても自立することができ、ライダーが少しバランスを崩しても、バイク自体がバランスを保つことで、低速走行時や停止時のふらつき、取り回しの際の転倒リスクを軽減。その一方で、通常の走行時には、既存の二輪車と同等の操縦性を実現。ツーリングやバイクのある日常をより楽しいものにする提案、なのだそうです。ファンクションとしては、頷けます。YAMAHAが前二輪、後ろ一輪のLMW:Leaning Multi Wheel(リーニング・マルチ・ホイール)モデル、トリシティで具現した「ころばないバイク」に、さらに迫ったようです。
長距離ツーリングの出先で、エンジンを切りサイドスタンドを出し、バイクを停めて降りたその瞬間の静寂。その静寂の中で、コイツ(←もちろん愛機)ととうとうここまでやってきたなあと、タンクを撫でる、みたいな感じにはたぶんならないのだろうなあ、なにしろ降りても自立してるんだものなあ、と。そこらへんが自分としては気がかりです
八十と書いてハトと読む
鎌倉を歩いていたら、鳩サブレーで有名な豊島屋のカフェ(甘味処?)豊島屋菓寮 八十小路(としまやかりょう はとこうじ)の入口に、この絵が貼ってありました。なんだか妙に身につまされるタッチです。
そういえば今年の干支は丁酉(ひのととり)ですね。謹賀新年!
天日干し天然もの
大晦日を迎えるにあたり自分が今年もっとも感銘を受けた景色をアップすることにしました。バイク好きにはたまらんフェンスです。特にディスプレイしている訳ではなく、忘れないよう掛けて置いている風の、天然もの物件ですね。偶然通りかかった、昭和な商店街のなかのバイク店。その隣の駐車スペースのフェンスです。青い木綿のツナギ姿でスクーターの整備をしていた主人に、思わず「ここ、写真撮ってもいいですか?」と聞けば、整備の手を休めず「いいですよ、どうぞ」。フェンスに陳列されたコレクションを改めて眺めれば、4気筒集合管系と、2サイクルスクーター系に大別できそう。1980年代バイクブームの残り香漂う景色です。
そして整備スペース奥の車輌の並びには、逆おむすび型のテールランプが。チラ見してちょっとドキドキしました。カワサキのWかも。自分には薄暗い中にあるそれが艶めかしく、足を止めてガン見出来ませんでした。したかったけど
YAMAHA RZ250
ああああこれはマズい!と、エンジンが吹け上がらなくなったバイクを本車線から路肩に寄せました。やがてアクセルグリップのひねりに反応は無くなり、シャラシャラとドライブチェーンは空回り。そして、バイクは止まりました。なぜマズいかといえば、指先でさぐったフュエルコックが、既に予備タンク位置だったからです。あああ、やってしまった! 時は深夜、名神高速のどこかです。携帯電話はおろか、二輪向けロードサービスも無かった1980年の夏の終わり、バイクは新車で買ったばかりのYAMAHA RZ250。サイドスタンドを出して、さてどうしよう、とあたりを眺めれば、そこは傾斜のついた盛り土高架の上。下は田んぼで、向こうに工場らしき建物が。灯りがついています。傍らを行くクルマのライトをたよりにシートを外し、テールカウル内にバンド留めしてあった車載工具を取り出し、なんとかタンクを外しました。見事にカラだったそれを両手に抱え、ガードレールを越え、盛り土を下り、灯りのもとへ。すみませーん! と何度か叫んで出てきたのは、かなりお酒を召したステテコ姿のおやじさん。どないした! とまず心配してくれました。バイクのタンクを抱えたまま、ガス欠で名神を降りて歩いて来たことを説明し、ガソリンの買い置きがあったら分けて欲しいとお願いすると、おやじさんは、ほうかほうか、事故やのうてよかったよかった、と目を細めます。こっちおいで、と工場を出て、トラックの傍らに。赤い灯油ポンプでそこからガソリンをわけてくれました。ええがな、気いつけてな、とガソリン代も受け取ってくれません。お礼を言って工場を辞し、ああ助かった、と歩き始めてタンクの重さに気がつきます。容量16ℓほどのタンクが、なみなみ満たされています。
盛り土の途中で、困り果てました。タンクの重さで上れません。勢いをつけ1.5mほどは上がるのですが、踏ん張れず滑り落ちてしまいます。結局、わずかずつタンクを上げて、置いて、登って、またタンクを上げて、自分も登ってと、尺取り虫のように。尖ったガソリンコックを壊さぬよう、詰まらせないよう、気をつけながらの匍匐(ほふく)前進ならぬ、匍匐登頂です。バイクの元に戻り、タンクをセットして走り始めれば、ヘトヘトでした。今でもRZ250を見かけるとあの夜の、疲労困憊(ひろうこんぱい)を思い出します。おやしさんの「ほうかほうか、事故やのうてよかったよかった」という声が聞こえます