あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

求む、アン王女仕様。

 走り出し、信号に停められるたび、コケそうになほどにステップボードが高い。国産おもてなし系スクーターになれた足には、敷居高めだ。思い出してみれば、ステップが高く重心が低いのはベスパの持ち味。ただし、水冷4ストローク SOHC 4バルブ 単気筒 278ccエンジンはスムーズで、がらんがらんと2サイクル特有の低回転トルク+フライホイールで加速する、あの感じは皆無。21PS/7750rpmの最高出力を誇り、CVTもスムーズネスに貢献している。クラッチレバーごと回して、がしゃがちゃん!とギアを上げていく、あの朴訥とした感じはもはや面影すら……。
 しかしなんといってもこのSei Giorni(セイ・ジョルニ)最大のアピールポイントは、フロントフェンダーの上に置かれたヘッドライトだろう。ボディカラーも1950年代風にクラシックだし。グレゴリー ペックがオードリー ヘップバーンのライディングを背後でサポートしてローマを駆け抜けた、あのモデルを思い出してしまいます。ヘップバーン人気は特に日本人の間で高いようで、15年ほど前に彼女が晩年を過ごしたスイス、レマン湖畔のトロシュナ村を訪ねた際、そこにあったヘップバーン記念館の入口でShoukado-bento(松花堂弁当)のオーダーを受け付けていたことを、脈略なく思い出しました。確か館内には『ローマの休日』で使ったベスパのナンバープレートが展示されていたと思います。さて、セイ・ジョルニのインプレに戻れば、レーシーな装いとは裏腹、通勤にも使えるまっとうさが印象に残りました。唯一の欠点は、跨がってしまうとそのオシャレなエクステリアが目に入らないこと。なぁーんだ、と思われるかもしれませんが、79万8千円という車両価格からすると、そんなことすら惜しく思えます。いま最も眺めて楽しいベスパといえるでしょう。アン王女仕様もあると、いいですね

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