あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

BMW R1200RT Spezialの宿命

 かつてボクサーツインといえば、BMW R100RSだった。スマホはおろか、ケータイもネットもなかったほんの30年ほど前の話だ。当時二輪誌編集者だった自分はある日、先輩編集者の「R100RSは、いいんだよ」とのつぶやきを聞き、じゃあ時期マシンはそれですか? と返した。すると彼はシリアスな表情で「ば~か、ありゃおまえ、あがりのバイクだよ。50くらいになって、もうそろそろこれが最後の愛車かな、って頃に乗るんだよ。まだまだよ」と、教えてくれた。20代だった自分は、そういうものかと受け流し、それから幾年月……。50くらいを通り越し50代後半を迎え、BMW R1200RT Spezialに乗り、案の定感動した。Rシリーズの真打ち感が凄い。ライディングポジションに姿勢を矯正されつつ、アクセルグリップを捻れば、回り込んだ気流に背中を押され、ますます背筋が伸びる。先に乗ったK1600 Grand Americaはすぐにでも電化されそうなフィールだったが、こちらの水平対向2気筒 1,169ccエンジンは時に激しく、時に妖艶、時にジェントル。一筋縄ではいかなくて、他に代え難い。しびれてしまう。
 なにか宿命を感じてしまうマシンである。告白すれば実は数年前、無性にBMW R1200STが欲しくなり、実際にアプルーブドものを見て回ったことがある。改めてR1200RTに乗れば、これもいいなあ、と思えてきた。今年に入ってからはカムフラージュグリーンのクロスカブ110でも買って、下道ツーリングを楽しもうか、などと風流に傾いていたのだが。不惑を過ぎ、50ぐらいを過ぎ、それでも惑い続けている。惑わしてくれるR 1200 RT Spezialの存在がうらめしくもあり、うれしくもある

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