あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

カネゴンちゃんぽん

漁解禁となり蟹の季節到来です。以前、宮津京都府)の蟹料理で有名な旅館を取材した際、そこで出す松葉蟹は、甲羅の中に海水がまわらないよう、水揚げから客膳に置くまで一度たりとも蟹をひっくり返さないようにしている、と板長が教えてくれました。なので食材の原価率が異常に高く、走りで浜値も高騰する頃の蟹尽くしは「おひとり様10万円いただいても厳しい」のだそうです。
 写真は、ところ変わって天草(熊本県)でいただいたガネちゃんぽん。ガネとは蟹をさす天草の言葉。こういう風に一匹どーんとオンしているのもいいですね。北海道のドライブインとかにも毛蟹ラーメンがありますが、あれは蟹にかまっているとラーメンがのびそうで、気忙しくもあり。その点ちゃんぽんは鷹揚で、ガネに集中できました。このガネ、不知火湾の渡り蟹だそうです。……ちょっとカネゴンに似ていますね

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Miami→マイアミ→舞網

伊豆に向かう際、終点の石橋ICで西湘BPを出て国道135号線に合流した先に、『磯料理 舞網』はありました。蒲鉾の鈴廣 石橋店手前です。今はダイビングショップになったようですが、舞網(まいあみ)というネーミングが好きでした。漁網が魚影濃い海に沈む直前、パッと空に舞う様が思い浮かび「磯料理」との相性もバツグン。「マイアミ」の響きはリゾート感も演出できており、西湘BPを出て「さあ!伊豆」となったドライバー マインドを刺激します。簡単素直に「まいあみ」と読め、キラキラ感やヤンキー感をスレスレかわせている点もグッドです。

 国道134号線沿い、江ノ島近くにもしらすで有名な『マイアミ貝新』とい店がありますが、こちらは藤沢市が1959年にマイアミビーチ市(City of Miami Beach)と姉妹都市提携を結び、一帯の海水浴場を「東洋のマイアミビーチ」と称したことに由来しているようです。自分的には、カタカナより断然漢字の舞網推しでした

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My first emoji

いまや赤い丸型ポストよりも稀少となった郵便太郎です。いや、郵便太郎というのは自分が思い込んでいた名前で、一般的には顔郵便マークというそうです。1968年7月に郵便番号が導入された際のマスコットですね。

 先日、携帯電話の絵文字(emoji)がMoMA(NY近代美術館)のコレクションに加わりました。1999年にNTTドコモiモードに導入された「笑顔」や「泣き顔」など176種類が「デザインの力で人々のコミュニケーションの方法を変えた」と評価されたとのこと。その一覧を見ましたが残念ながら(まあ当たり前ですが)郵便太郎もとい顔郵便マークは含まれていません。これ、フォントにもなっている(ほら→ 〠)メジャーな絵文字なのに。限られた文字数の中で感情を表現できる点が高く評価されたそうですが、〠はどんな感情を表現しているのでしょう? ……覚醒せよ、かな

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誰か来る!

ホテルや旅館の取材は、チェックアウトとチェックインの間が勝負。アウトが12時、インが15時の旅館だったりすると大変です。係の方が清掃とセッティングを終えたところから、現着した鑑識官ばりに写真を撮っていきます。それでも、ちょっと雲に隠れた日の光を待っていたりすると「いまお客様がフロントに到着されました! 3分以内に撤収してください」と急かされたり。海外でも、それは同様なのですが、海外ではそれに加えセレブリティの突然の来訪があり撤収!というパターンも。ドバイで写真のスパを撮影していたときもそうでした。誰が来たのかは教えてくれませんでしたがVIPが来るので即時撤収! とのこと。スパからホテルに伝いに外に出るのも基本バックヤード経由。ランドリールームや厨房を通り、VIPとは会わせないという徹底ぶりでした。
 その手の「誰か来た!」系の取材中断で、最も印象深かったのはハワイ島コナ国際空港(Kona International Airport at Keahole)での出来事です。プロペラ小型機教習所の搭乗取材終盤に、着陸許可がおり滑走路にアプローチしていたら管制塔から「待った!」が。プライベートジェットが着陸に割り込んだので待機せよ、とのことです。教官が誰のプライベートジェットなの? と聞いたら「Whitney Houston!」との応答。その時我々のセスナには4人が乗っていて皆ヘッドセットをしていたのですが、4人とも同時にため息をついたので、ちょっと盛り上がりました。ちなみにコナに降りたホイットニー ヒューストン機ですが、ドラッグ絡みのトラブルがあったようで、彼女は機外に出ることなくしばらく過ごし、結局そのまま離陸することに。コナ空港の片隅にぽつんと駐機していた彼女のジェットは、まるで函館空港のミグ25(МиГ-25:ベレンコ中尉亡命事件ですね)のように孤独でした

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魅惑のベッドルーム

コンテンポラリーアートと家具を扱う、LIMN(リン)というショップの一角に設えられていたベッドルームです。壁にあるのはアレックス ドニス(ALEX DONIS)のペイント『WAR』。これとザハ ハディット(Zaha Hadid)デザインの『GLACIER(氷河」)』というベンチが、とてもよかった。どちらも迫力あるプライスでしたが。
 リンがあるのはサンフランシスコ(San Francisco, CA U.S.A)のSoMa(ソーマ:South of Market)地区。オークランド(Oakland)対岸の、アーティスティックな湾岸エリアです。ジャクソン ポロック(Jackson Pollock)やアンセル アダムス(Ansel Adams)作品のコレクションにも熱心なサンフランシスコ近代美術館(San Francisco Museum of Modern Art:SFMOMA)も近くです

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小田原戦国武将茶漬け丼

この見事な枝ぶりは小田原城址公園本丸の巨松(おおまつ)です。樹高約30mのクロマツで、樹齢は推定400年以上。見上げると、線香花火のように松葉を優雅に広げていました。近くには本丸茶屋という御食事処があり『小田原戦国武将茶漬け丼』という名物が。丼におにぎり三つが並べられ、それはかつて小田原を治めた北条氏紋、三つ鱗(みつうろこ)を彷彿させます。そしておにぎりはお茶漬けになっていて、それはまがうかた無く、汁かけ飯。汁を飯にかけ、その後もう一度汁をかけ足した北条氏政(ほうじょう うじまさ)を見た父の氏康(うじやす)が、「日々食事をするのに、飯にかける汁の量も量れんとは。北条家もわしの代で終わりか」と嘆いたという、あの話つながりですね。2016年NH大河ドラマ真田丸』における高嶋政伸の怪演で、有名になったあのお茶漬けを、その現場近くでいただけるとは! 大いにそそられたのですが、残念ながら食事をしたばかりだったので、張り出してあったメニューの写真鑑賞にとどめました。

 汁のおかわりはできるのか? 誰か深く嘆いてくれるのか? 気になります。ネーミング、『氏政丼』でいいのに

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ディスコ ヴォランテ!

空飛ぶ円盤仕立てのテールを持つこのクルマは何でしょう? ヒント01「ドイツ車」、ヒント02「撮影したのは2000年12月」。イタリア語で『空飛ぶ円盤』の意の〝ディスコ ヴォランテ(Disco Volante)〟は、1952年のクーペC52登場でアルファロメオAlfa Romeo)のアイコンに。日本では1967年に発表された初代MAZDAコスモ スポーツがディスコ ヴォランテ感たっぷりでした。
 さて写真のモデル、正解はBMW Z8です。テールランプは当時はしりだったLEDでそのパキッとした点滅も、空飛ぶ円盤感演出に一役買っていました。試乗しながら湯谷温泉(愛知県新城市)の『はづ木』という旅館を訪ねた際、撮影したのだと思います。中国薬膳料理も美味な湯宿でした

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一戸-九戸、とは?

制限速度80km/h厳守でも、この電光掲示が放つメッセージは読み取れませんでした。午前3時前に川口JCT(junction:ジャンクション)から東北自動車道に入り、590km。安代(あしろ)JCT岩手県八幡平市)から八戸自動車道に入ってところです。一戸ICから九戸ICの間が雨、ということですね。漢数字の『一』と、ハイフンの『‐』がほぼ一緒なのでややこしい。さらにこの道は八戸が終点のはずなのに、その手前に九戸があるようです。
 傘を緑で塗りつぶす余力があるなら、ハイフンこそ緑にすべきでは? と取り急ぎ、時速80kmでぼやいてみました

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リゾッチャの頃

この海辺の団地風建築は神奈川県営長井みなとハイツではなく、改装前のヒルトン ハワイアン ビレッジ ワイキキ ビーチ リゾート(Hilton Hawaiian Village Waikiki Beach Resort)のレインボー・タワー(Rainbow Tower)。竣工は1968年。今から5年前に大がかりなリニューアルがなされましたが、それまではこんな感じでした。
 ハワイ、ワイキキというと、自分はこの建物を思い出します。JALにまだリゾッチャ(Reso`cha)が就航していた頃、つまり前世紀のハワイ景色です

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砂の浮いた道路は

松田聖子の『渚のバルコニー』がリリースされたのは、1982年4月のこと。松本隆による♪砂の浮いた道路は 夏に続いてる〽 というフレーズに衝撃を受けました。オートバイを深く愛していたので路面状況には敏感で、道に浮いた砂には気が滅入っていたのに、それが夏に続いていたとは! 当時自分は大阪在住の20歳で、関東にはそういう道があるんだろうな、たぶん湘南? と想像をたくましくしたものです。
 それから34年。いまの自分にとって砂の浮いた道路とは、ずばり若宮大路国道134号線にぶつかる滑川交差点周辺です。鶴岡八幡宮を背に、参道を海に向かって下り、由比ヶ浜海岸に出るあの信号のあたり。浜に出れば、バルコニーを思わせる海の家もたくさんあるし。今年も延々、夏に続いていましたね。ちなみにいまはもうキッパリと秋です

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瓶たちは清く正しく美しく

なにしろ輸入に頼っているので、フィンランドの食卓において野菜は貴重です。ヘルシンキからはるか彼方のスノーリゾートでもそうでした。ここに来る途中、立ち寄った中華料理屋で「今日はとてもフレッシュな野菜が入ったので、さっと炒めましょうか?」と提案され、いいですね是非、と出てきたのは、シンプルなキャベツ炒め。日本人同行者は皆、無口になりました。

 テーブルに無造作に置かれたミネラルウオーターのガラス瓶が、どれもピカピカです。ミネラルウオーターが瓶入りで、しかもその瓶が新品同様というのは、なかなか貴重かもしれません。キャンドルの火、その揺らめきをものともせず、瓶たちは清く正しく美しくと、テーブルを見渡しています

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中世にほんの1時間ほど

散歩中ふと思いつき、北鎌倉の円覚寺へ。円覚寺での過ごし方は、もうだいたい決まっていて、この山門をくぐり、仏殿にて宝冠釈迦如来(ほうかんしゃかにょらい)と天井の白龍図を納得するまで眺めます。納得したら方丈(ほうじょう)を訪ね、庭を回り込んだ先の一室へ、床の間の阿弥陀如来(あみだにょらい)を見に行きます。方丈を出たら舎利殿(しゃりでん)の門から、山を背負って遠くたつ、その神奈川県唯一の国宝建造物を眺めます。ここの左手には鐘があって、大晦日の夜には門が開き、鐘突き後には舎利殿を近くで眺めることができます。そして如意庵へ。玄関に活けられた花がいいですね。傍らには「an-nei 安寧 如意庵茶寮」と書かれた木片があり、カフェとして営業する日もあるとか。
 その後は山門に戻り、まわりに置かれたベンチのひとつへ。上層屋根の見事な軒反りを見上げつつ、この門を囲んでの盆踊りをしたなあ、ついこの前のようだけどもう秋だなあ、などと感慨に耽ります。これでだいたい1時間。気持ちが「さて!」となったら腰を上げ総門を出ます。階段を降りる途中、境内の線路を横須賀線が横切ったりすると、1時間ほどいた中世から、戻ってきたような気になります

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運転中、眠くなったら

運転していて眠くなったらどうしますか? 自分は一人だったら、まず腰を浮かせながら大声を出してみます。はっ! とか、あっ! とか。それで駄目なら、歌います。思いついたフレーズでシャウト! ヘッドバンキングも辞しません。太腿を拳で連打したり。それでも駄目なら上半身、脱げるところまで脱ぎ、空調温度を下げ開けられれば窓を開けます。それでも駄目なら(だいたいここまでくると、何しても駄目です)瞼を指で開き、高音&プレスティシモ(Prestissimo:極めて速く)で口笛を吹きます。そこまで至るのは、自動車専用道でとりあえずクルマを停められるSAか、ICまで走り続けなくてはいけない、というシチュエーション。その口笛はいつも同じ曲で、我がことながら「え? なぜ、いまそれ?」と、驚きます。iTunesをシャッフルで聴くと決まって変な曲で始まる、あの感じに似ています。
 米西海岸から東に向かって移動中、助手席に座り、ステアリングを握るコーディネーターと「運転中眠くなったらどうするか」談義で盛り上がりました。色々な(本当に良きにつけ悪しきにつけバリエーション豊富でした)方法を試した彼は、トラックドライバー愛用のコーンナッツ(Corn Nuts)に行き着いたそうです。ボリボリ噛むと振動で脳が刺激され、冴えるとのこと。試したら、なるほど結構冴えました。コーンナッツがあまりポピュラーでない日本だったら伊賀(三重県)のかた焼とか、いいかもしれません

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5分の旅情

海峡を行き来する関門連絡船に乗りました。北九州 門司港を出て、下関唐戸1号桟橋に向かいます。所要時間は5分。時に驚くべき速さになる潮を乗り越え、船を避け突っ切るから、エンジンは相当馬力を出しているよう。桟橋を離れて本気になったら終始ドリフトしていました。
 関門連絡船に乗るなら、古川薫さんが藤原義江の生涯を描いた『漂泊者のアリア』を読んでからがおススメです。轟々と行き交う潮流にもまれた運命か……、と旅情にどっぷり浸れます

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