あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

旅の宿。21世紀初期ver.

 民宿で夕飯の際、ビールをたのんだら小鉢がついてきました。蛸です。そういえばそこ天草(熊本県)の漁港には、素焼きレンガ色の蛸壺が無数に転がっていました。予想外にタコは柔らか。アズキっぽい香りで甘く、なんだか物凄く美味い。
 夕食前に入った風呂は入浴剤イン済みで湯は緑色。オモチャの船と混浴でした。ついこの前まで、割と普通にそんな民宿を利用していました。いまやむかし、です。ついこの前、と書きましたがよく考えてみれば21世紀初頭の話でした

f:id:takimasashi:20180601073829j:plain

87年前の趣味の鮎釣り

 調べ物をするとき自分はよく「カーリル」という書籍検索サイトを利用します。登録した図書館の蔵書を一括してキーワード検索できるからです。先日記事を書くため「鮎」を検索したところ、鎌倉中央図書館に「趣味の鮎釣り」というタイトルがありました。そのままWeb予約して後日カウンターで受け取ったら、なんか表紙がいいかんじです。ひっくり返すと、背表紙には「¥0.80」の筆書き。……えっ! と思って奥付を見れば「昭和6年6月1日發行 定價八拾銭」とありました。
 昭和6年、ということは1931年刊行の本です。87年前の書籍をフツーに貸してくれるなんて、鎌倉中央図書館はやはり只者ではありません。2015年8月26日に「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」とツイートし、話題を提供したときも誇らしく思いましたが、さらに惚れてしまいそうです

f:id:takimasashi:20180530181544j:plain

ナッチャンworld乗船記

 函館港を母港とするナッチャンworldが久里浜港に来ました。青森-函館間に就航した当時から気になっていたこのウェーブ・ピアーサー(Wave piercer)高速フェリーに、はじめて(係留中のみですが)乗船。
 全長 112m、全幅 30.5m、総トン数 10,712tながら、モナコに係留されていたら合いそうにスタイリッシュ。フェリーというより、ヨットっぽい。乗船した瞬間にアルミ艇であることが実感できました。軽くて硬いものに囲まれている感があります。以前スペインで、年式落ちのFORD FocusのWRCカーに乗せてもらった時にも感じた軽くて硬いものに囲まれてる感です。航行中にも乗ってみたい。それにしてもナッチャンworldって、凄い名前だなぁ。まぁ覚えやすいけど

f:id:takimasashi:20180527154421j:plain

るもいハレ 午前午後とも0%

 朝起きて「ああホテルか」と目に入った天井に思い、時間があればバスタブに湯を張ります。TVをつけ、昨夜から大きな事件が起きていないか、今日の天気の予報はどうか、部屋のなかをうろうろしながら確かめます。カメラやハンディカム、PC、ICレコーダー、予備バッテリーがちゃんと充電できたか、ひとつひとつ確かめながらバッグに。いまや旅先ではWi-Fiと電源の下僕です。
 ドボドボと溜まる湯量を気にしつつ目の端でTVを見れば、馴染みのない地名と晴れマーク。ああいま北海道だと知る瞬間、ちょっと旅情にひたります

f:id:takimasashi:20180524101908j:plain

ウエルカム名古屋、ハロー矢場とん

 とんかつも名古屋まで行けばみそカツとなります。矢場とん、いいですね。このマスコッキャラクターがとてもいい。「横綱ぶた」というそうです。目が虚空を見ていて、グレゴリー青山さんの漫画に出てきそうです。
 矢場町本店(名古屋市中区大須)の前を通ると、いま名古屋にいるんだオレ、と実感できます。実は銀座一丁目にも店はあり、その角は自分的には名古屋の飛び地扱いです

f:id:takimasashi:20180523081454j:plain

ひげのとんかつ 青い塔

 中央自動車道を走っていて伊那IC(長野県伊那市)を通る予定があれば、たいてい降りて、ここでソースかつ丼(ロースかつ丼)をいただきます。もちろん旨いからですが、この看板見たさ、というのもごく微量あります。
 なぜ「ひげのとんかつ」? なぜ「青い塔」? 繁盛店なので、いつも店の人は忙しく余談の余地など無く、通い続けて十年以上謎のまま。帰りに駐車場を出ながらもう一度この看板を見上げ「それにしても……」と繰り返しています。あ、いま気がつきました。「仙醸」の下の一筆書き風のCI、なんとなく猫(フライング キャット)かなと(十年来)思っていましたが……「ひげ」だ!

f:id:takimasashi:20180522064255j:plain

石田英司 × 原節子

トヨタ博物館(愛知県長久手市)の入口には1963年製のTOYOTA ボンネットバス FB80型が展示されています。インドネシアで活躍した車輌をレストアした個体で、行き先表示は『トヨタ博物館』。乗り込みシートに腰掛けることも可能で、運転席上部には写真のネームプレートが。車掌『原節子』は、おお気張ったな豪勢だな、と笑えますが、運転手の『石田英司』さんが腑に落ちません。自分的解釈は、豊田佐吉翁の甥にしてトヨタ自動車工業株式会社第五代社長である豊田英二氏への忖度(そんたく)というか、リコメンドではなかろうか、と。……二文字違いが、惜しいかなぁ。
 次の日曜(5月27日)は、いよいよ第29回 トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバルですね。芝生の上でゆっくり、オーナーに愛され続けている国内外の名車を眺めるのはいいものです。トヨタ博物館で開催中の企画展では、トヨタ7も展示されていて、オーラを出しまくっています

f:id:takimasashi:20180520105614j:plain

心太ライダー

 ひさしぶりにオートバイで出かけ、昼食は伊豆漁協仁科支所直売所『沖あがり食堂』にて、写真の「いか様丼」。ネーミングにやや難ありですが、イケます。ただし自分の目的は、その後にいただくところてん(一杯100円)です。これが超絶旨い。私が静岡生まれだからそう感じるのかもしれません。いまや天草(てんぐさ)シーズンも佳境、夏好きなオレ的大御馳走です。齢を重ねるごと〝涙もろく〟ならぬ〝ところてんもろく〟なっている気もします。ところてんは心太と書きます。心の隙間にするする入り、強力パテのように埋めてしまうから心太、でしょうか?
 オートバイで西伊豆を訪ね、漁協の丼よりも心太に心震わせています。まがうかた無くオッサンです。二杯いただきました、ごちそうさまでした

f:id:takimasashi:20180517185153j:plain

午前10時前には的矢湾大橋を

 ツーリングというのは案外難しいもので、夏がいいかといえば、まぁいいのだけれど暑すぎるとどうもいけない。冬場は冷え込むと歯がガチガチと震えひたすらツラくなりこれもいけない。路面が凍結していないか目を凝らしての峠越えなどシリアスで、温泉、熱燗、温泉、熱燗と唱名し煩悩まみれ。そこへいくと5月の梅雨入り前は、バイク旅にうってつけ。五月晴れの下、田を渡り水の香を含んだ風に吹かれて走れば人生最良の日のような気がしてきます。
 いまバイクで行きたいのは紀伊。串本か田辺あたりまで走りたい。朝一番の伊勢湾フェリー伊良湖港発8時10分だから、下道で行くとして4時頃出発だろうなぁ。9時過ぎにはフェリーが鳥羽港に着くだろうから、写真の的矢湾大橋を10時前には渡れるな、と頭の中、バイクは快調です。尾鷲から新鹿、熊野、那智熊野灘を左手に(脳内を)走り続けます

f:id:takimasashi:20180511074626j:plain

自分調べ、オレ限定のBMW Urban G/S

 2018年春時点で、最も気になっていた1台がこのBMW Motorrad R nineT Urban G/Sだった。まあ「自分調べ、オレ限定」ではありますが。だから跨がったときはドキドキした。38年前、新車のYAMAHA RZ250にはじめて跨がった、あの夏の日のように。
 ところが走り出してすぐに、風当たりの強さにビックリ。世間の、といった比喩ではなくリアルに風の渦中に居る。まぁ、K1600 Grand America、R 1200 RT SpezialとBMW大御所モデルを試乗した後だから、ことさらそう感じたのだろう。BMWにとって風は敵なのだ、と改めて思い知らされた。ヤワな自分は、加速させつつ「もう少しハンドルをアップさせて、もう少しシートをフカフカにすれば……」などと夢想し、「あ、ダメだ、それだとリアルGSになってしまう!」と自らツッコミを。男は黙って系、というか武士は食わねど系というか、実にスタイリッシュなモデルだ。マシンを降りて再びその容姿を眺めれば、やはり素晴らしい。長距離ツーリングだったら断然R1200 RTだが、R nineT Urban G/Sを愛機としたい自分もいる。そんな複雑な男心にR nineT Urban G/Sはほぼ直角に刺ささってくる(ただし自分調べ、オレ限定)。R1200 RTが武将の愛馬だとしたら、R nineT Urban G/Sは一番槍のそれである。ああ男心にグイグイ来るなぁ、刺さるなぁ。次の戦(いくさ)の備えに欲しいなぁ(笑)

f:id:takimasashi:20180508074726j:plain

BMW R1200RT Spezialの宿命

 かつてボクサーツインといえば、BMW R100RSだった。スマホはおろか、ケータイもネットもなかったほんの30年ほど前の話だ。当時二輪誌編集者だった自分はある日、先輩編集者の「R100RSは、いいんだよ」とのつぶやきを聞き、じゃあ時期マシンはそれですか? と返した。すると彼はシリアスな表情で「ば~か、ありゃおまえ、あがりのバイクだよ。50くらいになって、もうそろそろこれが最後の愛車かな、って頃に乗るんだよ。まだまだよ」と、教えてくれた。20代だった自分は、そういうものかと受け流し、それから幾年月……。50くらいを通り越し50代後半を迎え、BMW R1200RT Spezialに乗り、案の定感動した。Rシリーズの真打ち感が凄い。ライディングポジションに姿勢を矯正されつつ、アクセルグリップを捻れば、回り込んだ気流に背中を押され、ますます背筋が伸びる。先に乗ったK1600 Grand Americaはすぐにでも電化されそうなフィールだったが、こちらの水平対向2気筒 1,169ccエンジンは時に激しく、時に妖艶、時にジェントル。一筋縄ではいかなくて、他に代え難い。しびれてしまう。
 なにか宿命を感じてしまうマシンである。告白すれば実は数年前、無性にBMW R1200STが欲しくなり、実際にアプルーブドものを見て回ったことがある。改めてR1200RTに乗れば、これもいいなあ、と思えてきた。今年に入ってからはカムフラージュグリーンのクロスカブ110でも買って、下道ツーリングを楽しもうか、などと風流に傾いていたのだが。不惑を過ぎ、50ぐらいを過ぎ、それでも惑い続けている。惑わしてくれるR 1200 RT Spezialの存在がうらめしくもあり、うれしくもある

f:id:takimasashi:20180506080039j:plain

贅沢恐竜、BMW K1600 Grand America

BMW K1600 Grand Americaがもし横浜トリエンナーレの会場にあったら、会期中に横浜美術館のエントランスに置かれてたりしたら、コンテンポラリーアート作品だと誰もが信じ疑わない気がする。オートバイにしてはあまりに異形、巨大だ。間違ってどこかのボタンを長押ししたら、トランスフォームしてしまいそう。ところが乗るとこれが楽ちん。走る巨大安楽椅子となる。「押せば命の泉湧く」と笑った浪越徳治郎(なみこし とくじろう)先生にならえば、「捻ればパワーの泉湧く」といったかんじ。なにしろ水冷直列6気筒 1,649ccなのだから、今や4輪を含めたオールBMWの中でもとびきり贅沢なエンジンといえよう。そう、BMW K1600 Grand Americaは贅沢のひと言に尽きていて、このご時世に貴重な存在だ。その巨大さには1950年代末期のキャデラック エルドラド ビアリッツ(Cadillac Eldorado Biarritz)を彷彿させるものがある。もうこれが最後かもしれないな感が、実に濃厚。バイクなのにリアがキャプテンシートっぽいのも珍しい。

 以前、ミュンヘン空港近くのガソリンスタンドで、BMWの6気筒モデルを給油機横に停めたライダーが、跨がったまま自ら給油しているのを見て、感銘を受けたことがある。やっぱりそれくらいの体の大きさを想定してつくられているよな、と恐れ入ってしまった。GTほどではないにせよ、そのスケールからすれば恐ろしいほど乗りやすいのだが。ちなみに車重は358kgで、坂道発進アシストも標準装備。案外、早期電化により、生きながらえるモデルなのかもしれません

f:id:takimasashi:20180505141026j:plain

求む、アン王女仕様。

 走り出し、信号に停められるたび、コケそうになほどにステップボードが高い。国産おもてなし系スクーターになれた足には、敷居高めだ。思い出してみれば、ステップが高く重心が低いのはベスパの持ち味。ただし、水冷4ストローク SOHC 4バルブ 単気筒 278ccエンジンはスムーズで、がらんがらんと2サイクル特有の低回転トルク+フライホイールで加速する、あの感じは皆無。21PS/7750rpmの最高出力を誇り、CVTもスムーズネスに貢献している。クラッチレバーごと回して、がしゃがちゃん!とギアを上げていく、あの朴訥とした感じはもはや面影すら……。
 しかしなんといってもこのSei Giorni(セイ・ジョルニ)最大のアピールポイントは、フロントフェンダーの上に置かれたヘッドライトだろう。ボディカラーも1950年代風にクラシックだし。グレゴリー ペックがオードリー ヘップバーンのライディングを背後でサポートしてローマを駆け抜けた、あのモデルを思い出してしまいます。ヘップバーン人気は特に日本人の間で高いようで、15年ほど前に彼女が晩年を過ごしたスイス、レマン湖畔のトロシュナ村を訪ねた際、そこにあったヘップバーン記念館の入口でShoukado-bento(松花堂弁当)のオーダーを受け付けていたことを、脈略なく思い出しました。確か館内には『ローマの休日』で使ったベスパのナンバープレートが展示されていたと思います。さて、セイ・ジョルニのインプレに戻れば、レーシーな装いとは裏腹、通勤にも使えるまっとうさが印象に残りました。唯一の欠点は、跨がってしまうとそのオシャレなエクステリアが目に入らないこと。なぁーんだ、と思われるかもしれませんが、79万8千円という車両価格からすると、そんなことすら惜しく思えます。いま最も眺めて楽しいベスパといえるでしょう。アン王女仕様もあると、いいですね

f:id:takimasashi:20180504114138j:plain

路傍のレジェンド

 岐阜市内を名鉄岐阜駅から柳ヶ瀬に向かって散歩中、見かけたハーレーのフラッドヘッド。1930年代のモデルが、現行モデルとそれほど変わっていないことを教えてくれています。
 春というより初夏の夕日のなか、そろそろビールでも、あてどなくぶらぶらしていて目にし、驚きました。戦前モデルがまだ現役! ちょっと夢のような眺めです。街が夜に向け表情を変えるなか、行き交う人々の傍ら、レジェンドは静かに息を殺していました

f:id:takimasashi:20180502065153j:plain

鮎のぼり、一夜干し風


鯉のぼりが空を泳ぎだせば春たけなわ。カツオのぼり、もありますね。零戦的な鯉のぼりに比べ、雷電的なカツオのぼりは流体力学的にもスタイリッシュで、ブルー基調のカラーリングは春空に映えます。
 写真は岐阜県岐阜市長良川沿いで見かけた鮎のぼり。春風に揺らぐ影が鮎の魚影を思わせ、水ぬるむ季節到来を告げています。今年は早々に日差しが強いため、鮎の一夜干し風でもありますね。美味そう感は〝のぼりシリーズ〟随一です

f:id:takimasashi:20180424054603j:plain