あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

132年もの?

 逗子からスカ線の9号車、ボックス席に乗り新橋に向かっている途中、北鎌倉駅手前で急停車。大船手前の踏切で緊急信号が発せられたため、安全確認しているとのこと。そのとき、窓の外がちょうど扇ケ谷トンネル入口でした。
 煉瓦造りです。大船ー横須賀間が開通したのは明治22年(1889年)のことですから、132年ものでしょうか? ライト兄弟が世界初の有人動力飛行に成功したのが1903年ですから、その4年前、航空機など影も形も無かった頃からの建造物に、日々の移動でお世話になっているのかと思ったら、感慨ひとしお。時代を帯びた煉瓦の肌を、じっと見ていたら、やがて電車はガタッガタン!と動き始めました

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小川漁港にて。

 小川漁港(静岡県焼津市)はこんなに眺めが良かったのか! と驚きました。道を挟んだ向こうにある小川港魚河岸食堂には何度か行っていたのですが、強風晴天のその日は海越しの富士が見事でした。
 小川港魚河岸食堂は朝7時から漁協組合員に朝食・昼食を提供している(土曜は10時から)人気店。お昼時となれば平日でも、非組合員が列をなしています。自分的には南まぐろ定食(1200円)一択で食券券売機にのぞむのですが、いざボタンを押す時に焼津定食(1600円)にある鯖塩焼きを思いだし逡巡、指先しばし泳ぎます

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諸行無常の速さあり

 その日の飛行機は浜松(静岡県)をかすめ渥美半島に沿い、伊良湖(愛知県)と鳥羽(三重県)を結ぶ伊勢湾フェリー航路のほぼ真上を行きました。志摩に入ってからは、紀伊半島の東岸沿いを飛んでいきます。羽田からずっと雲がかからず、窓からの眺めは Live版Google Earthのよう。目が離せません。
 ああ、このあたりじゃないか? と目をこらせば、大好きな新鹿海岸(三重県熊野市)の白砂がキラリと輝きました。時計を見れば、席に着いてから1時間かかっていません。かつて何度か自宅のある逗子(神奈川県)からそのあたりとをオートバイで行き来していますが、ほぼ1日かかります。改めてジェット旅客機の速さに驚くと同時に諸行無常感すら覚え、上空はるかもはや溜息すら出ません

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あなたとわたしのA&W

 沖縄に行くとついつい寄ってしまうA&W(エイ アンド ダブリュ)。地元では「エンダー」で通っています。A&Wは、創業者のロイ・アレン(Roy Allen)と、1919年に彼と提携したフランク・ライト(Frank Wright)の2人のファミリーネーム由来とのこと。しかし、1970年代に『あ(A)なたとわ(W)たしのドライブイン』というフレーズのCMソングを在沖ラジオ局で流したため、A&Wが「あなたとわたし」の略だと思っている方も多いとか。このエピソード、割と好みです。
 写真は名護店でオーダーしたThe A&Wバーガー。〝全店で毎日おかわり無料〟なルートビア(Rootbeer)とともにいただけば、まがうかた無く沖縄の味でした

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窓とカーテン

 ふと目覚め、はてここは何処? と手がかりを捜す気分というのは悪くありません。自身が誰なのかもやや曖昧で、僅かに怯えています。カーテンをみると、外国なのか国内なのか、瞬時にわかります。質感や大きさ、醸す雰囲気が決定的に違います。
 そもそも窓のつくりも違います。日本のホテルの窓は、だいたい規格モノで統一されていて主たるファンクションは〝遮断〟です。自分が日本のホテルで最も好きな窓は、ベネッセハウス オーバルBenesse House Oval )のオーバル スイートにある、硝子がフレームごと床下に収納され、テラスとフロアが完全にインフィニティになる窓です。部屋にいながらにして、行き交う船を眺めつつ瀬戸内の風で夕涼み、という贅沢を可能にしてくれる窓でした。写真は、数年前の北米東海岸のどこかで撮りました。ジェットラグに飛行機遅延が重なり、いつ寝たかはもとより、その薄明かりが朝なのか夕方なのかもわかりません

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五剣山に誓うこと

 神戸淡路鳴門自動車道大鳴門橋を渡れば、道は四国に。高松自動車道に入り、ポコポコ並ぶおむすび型の山の連なりに「ああ四国に来たな」と実感します。もうひとつ、自分の四国瀬戸内側のアイコンに、五剣山があります。
 志度(しど)ICを過ぎた右手前方に、志度湾越しに見えるその山は、園山俊二が描く『ギャートルズ』の、突然噴火する火山的なフォルム。この山を見ると「そうか、志度まで来たか……」と感慨深く、♬Anarchy in the U.K(アナーキー・イン・ザ・U.K.)が脳内に響きます。自分が志度で店を始めるなら、店名は『ビシャス』にします、とそのたび五剣山に誓います

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Ford Crown Victoria

 かつてアメリカでは、フォード クラウン ビクトリア(Ford Crown Victoria)のタクシーによく乗りました。写真は今から13年前、2008年7月のボストン(Boston, Massachusetts)。ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパで北海道洞爺湖サミットが開かれていたあの頃のボストン市街です。クラウン ビクトリア キャブの三重連です。庶民派フルサイズセダンの代表格として、タクシーやパトカーにも多用されていたクラウン ビクトリア が生産終了となるのは、この3年後のこと。
 いまはどうなっているのだろうと、ボストン キャブ(Boston Cab)のhpを見たら、「ボストンキャブディスパッチは、主にトヨタ カムリ ハイブリッド(Toyota Camry Hybrids)で構成されており、400台余のうち350台以上がトヨタ カムリ ハイブリッドです」と誇らしげです。ひるがえって、日本のクラウンも生産終了が噂され始めた今日この頃。今のうち、クラウン タクシーも撮っておいた方がいいかな

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サクサクと無心。

 昨年(2020年)7月に上梓された「一人称単数」(村上春樹 文藝春秋刊)の中に品川猿の告白という短編があり、そこでは大瓶ビールにさきイカと柿ピーが出てきます。寝入りに読んでいたら、ビールが飲みたくなり……。
 じゃあ自分的大瓶ビールと合わせたいものはなんだろう? と熟考。結論のひとつとして浮上したのは、横浜野毛 センターグリルのランチプレートに載ってくるチキンカツでした。チキンカツだけではダメです。ワンノブゼム(one of them)として、オムライスのソースにぽかり浮かぶチキンカツがいい。2階窓際の席で風に硝子がたてる音を聴きつつ昼過ぎ、チキンカツはサクサクと軽やかに無心です。京急日ノ出町駅で待ち合わせして、品川猿にご馳走してあげたいなぁ

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アート vs. 不条理

 ちょっと前の話ですが材木座海岸(神奈川県鎌倉市)を散歩後、滑川から若宮大路鎌倉駅に向かって歩いていた時のこと。下馬を過ぎ、ダイハツのオープンカーをテーマとしたカフェに差し掛かかったところで、視界の隅に何かが引っかかりました。瞬間植木屋さん? と思い、いや廃棄物運搬中……? となり、視点を定めた2秒後には訳がわからなくなりました。アート系?
 たぶん、そうなのでしょう。でもこれが作品なのか、それとも作品を運んでいるのかがわかりません。サイドに配された孟宗竹がアート感を控えめに醸していますが、やや強めに不条理です

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温根別給油所にて

 朱鞠内湖(北海道雨竜郡幌加内町)湖畔でテント泊した翌朝の話です。荷物をまとめ国道275号線を南下。天気は晴朗で風心地良くバイクも快調、申し分ありません。が、ちょっと不安が。昨日名寄でガソリンを入れ忘れたからです。タンク容量6リットル強の自分のバイクの無給油走行距離は180~210km程。トリップメーターはもう既に170kmを超えているのに、ガソリンスタンドの気配はなく、というか人家や人の気配なく、スマホの電波もありません。最寄りスタンド検索もできず、ついにエンジンが咳き込み始めました、山中路肩に寄せ、携行缶から1リットル弱を注ぎます。その間国道にはクルマ一台走って来ませんでした。これでもう手持ちの札はありません。
 道はやがて国道275号線国道239号線の分岐となり、多いに迷いましたが、なんとなく左折して国道239号線へ。その先に道端ぽつんと給油機が! 無人でしたが給油機に貼られた告知に安心し、なんだかアメリカ西部田舎町のジェネラルストアみたいだなあ、やれやれ、としばし感慨に。ふと気づけば後ろにJAの制服を纏った女性が立っていて、目が合うとニコッと笑顔に。その彼女の笑顔に張り詰めていた緊張が解け、というか裂け、涙が出そうになりました

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元吉なぶらさん

 須崎から国道56号線、中村街道を宿毛に向かっている途中、右手にあった道の駅なぶら土佐佐賀(高知県幡多郡黒潮町佐賀)に寄りました。そのイートイン スペース壁面です。地元の漁師さんをヒントに、デハラユキノリさんが描いた「元吉なぶらさん」だそうです。
 外には元吉なぶらさんの顔ハメ看板もありました。なぶらさん、人気のようです。いい画だなあ

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「つめた~い」チキンヌードルスープ

 那覇市沖縄県)内の自販機でキャンベルのスープ缶を売っていました。価格は100円。試しにチキンヌードル(Chicken Noodle SOUP)を買ってみたら、キンキンに冷えてました。ポパイのホウレン草缶みたいに、その場で開けてゴクゴク飲み干すことはないだろうから(一応2倍濃縮タイプで、空き缶一杯分の牛乳または水を混ぜあたためていただくことが推奨されています)「つめた~い」にカテゴライズされているのもむべなるかな……、と思ったら自販機にそもそも「あたたか~い」設定がありませんでした。さすが、沖縄!
 この自販機は那覇の中心部から国道507号線、古波藏大通りを真玉橋に向かい「古波藏(東)」交差点を過ぎた左手にあります。アムズガーデン国場店のちょっと手前です。お見逃しなく

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スカ線ラヴァーの詩③

 スカ線愛を綴った最終回のテーマは再開です。それはしなの鉄道 軽井沢駅でのこと。入線してきた小諸行きが旧スカ線カラーでした。自分が葉山に越した30年前はまだ、スカ線といえばこの色でまん中のグリーン車のみ、順次2階建てステンレスカーに切り替わっていきました。
 ある5月の日中気温がグングン上昇し、窓を開けたら風の涼しく心底心地良かったこと。そのまま多摩川の鉄橋に差し掛かったら反響音が凄まじかったこと、この顔を見てすぐに思い出しました。自分のスカ線愛は、この電車に乗っていた頃に育くまれた気がします。円覚寺境内を横切り北鎌倉駅に停まるのも、このカラーが最も合う気がします。夏になると円覚寺の雲水が托鉢のためスカ線に乗りますが、それがシックリくるのも断然このスカ線色の電車でした

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スカ線ラヴァーの詩 ②

 スカ線ラヴァーの自分としては、新型車輌導入にちょっと浮かれていますが、クロスシートラヴァーでもあるので、そこはやや複雑。新型車輌では廃されてしまい、進行方向に向かって座り車窓に流れる景色をぼんやり眺められるのはグリーン車のみとなってしまうからです。
 逗子からだと東京方面に向かう先頭車両寄りにあるこのシート、最初に見たときは座面が浮いている感じがマーク・ニューソン(Marc Andrew Newson)っぽくて衝撃でした。廃止へのカウントダウンが始まったいま改めて見ても、クールです

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スカ線ラヴァーの歌 ①

 スカ線ラヴァーの自分としては、新型車輌導入にちょっと浮かれています。静かだし、乗り心地もいいし、シートの座り心地も上等だし。今日も横浜駅の9番線ホームで逗子方面行きを待っていたら〝新車〟が来たので、ちょっとアガりました。
 思えば自分のスカ線歴は30年を超えており、思い出も多々あります。スカ線で一番驚いたのは、新橋から乗った久里浜行き最終で深く深く寝入ってしまい、久里浜で起こされたこと。長蛇のタクシー待ちに並び、その頃住んでいた葉山の自宅に着いたのは午前2時過ぎ。翌日、成田からパリに行く予定があったのですが、さらに寝過ごしてしまい、そのフライトも変更に。以来、アブナイな、と思ったら久里浜行きはスルーして、その後の逗子行最終に乗るように。自分的三大寝過ごしのふたつを同日に起こしてしまいました

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