あ ば ろ ん

瀧昌史どんぶらこっこすっこっこ旅日記

Okinawa octopus

 謹賀新年らしい縁起物、タコの話を続けます。海辺の壁面にタコのペイント、というのは日本全国で割とよく見かけます。防波堤を彩る地元小中学生の絵の連なりには、大抵タコがいます。自分が最も好きなのは、鎌倉海浜公園水泳プール(神奈川県鎌倉市)の壁面に描かれたタコ。壁の向こう、国道134号線を挟んで相模湾が広がっていることを思わせるのびのびとした筆使いで無心なタコ絵は絶品です。
 写真は備瀬(びせ:沖縄県国頭郡本部町)のフクギ並木を抜けた先、膝下ぐらいの腰掛けるのに丁度良い高さの防波堤(と、いうより防砂堤?)に描かれていたタコです。筆の運びの手堅さ、巧みなフレーミング、シームレスな円からすると、大人によるものかと思われますが、軽やかでなかなかの名画です。この備瀬の海、YouTubeで『カフェチャハヤブラン』がLive配信してくれているので、時々思い出してはぼーっと眺めます。海越しの伊江島が、いい感じです。時折防波堤沿いに散歩している方が映り込み、うらやましくなります

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Octopus Playground Slide

 正月用に茹だこが出回るのは、スライスすると紅白になり縁起が良いから。写真は北海道の中頓別町寿公園にあったタコ滑り台(Octopus Playground Slide)。ちょっと紅白なので、お年賀がわりにupしてみました。
 手前に子ダコがいますね。親ダコの目つきもちょっといいかんじです。色味からすると茹だった直後、かもしれません。バックに広がる不穏な雲もナイスですね

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夏の足湯、冬の足湯

 クッチャロ湖畔キャンプ場(北海道枝幸郡浜頓別町)を出てすぐに見かけた『はまとんべつ温泉 足湯』の看板です。なぜ足が3本? はさておき(しかも何処かで見た気もします)、足を浸してみました。足湯でくつろぐ秘訣は、できるだけどうでも良いことに集中することです。……赤塚不二夫の『天才バカボン』にセリフが「ダリラリラーン」と「ホッカイローのケーコターン」だけのキャラがいて、あの“ケーコターン”は藤圭子という説があったが、本当だろうか? について深く思いを巡らせていたら、すぐに発汗。そしてああ、三本足といえばマン島か!と、突然思い出しました。マン島(Isle of Man)の旗にあるトリスケル(triskele、τρισκελής)です。日本語では三脚巴(さんきゃくともえ)。これも足湯浴に相応しい、どうでも良いウンチクですね。
 この足湯、5~10月の9時~17時のみオープンしていて入湯無料。今頃は寒いんだろうな、とライブカメラを検索したら、クッチャロ湖、ほぼ凍結しています。僅かにのぞいている水面に、白鳥を含む水鳥がひしめいていました! そこは鳥たちの越冬足湯の様相です

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夏日???

 読谷(よみたん:沖縄県中頭郡読谷村)の方と話していて、「3月なのにその日は夏日で……」と言ったら「なに、それ?」と聞き返されました。そもそも「夏日」という言葉を知らぬとのこと。最高気温 25℃以上の日をそう呼ぶ、と説明しても全く腑に落ちてない様子です。
 改めて考えてみれば、そんな日が珍しいゆえの「夏日」であって、それがほぼデフォルトの沖縄では意味をなさないのかも。だいたい、この前沖縄に行ったのはいつだった? と自身に問うてもほぼ「暑かったから……」と、そこから思い出します。うりずん、若夏(ワカナチ)、夏(ナチ)、十月夏小(ジュウグヮチナチグヮー)と、ほぼ常夏だものなぁ。写真は羽田に戻る際の那覇空港(Naha Airport)、搭乗機の上に湧いた雲。夏好きとしては、猛烈に帰りたくなくなります

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雪と跳ね馬

 ホテルの窓、カーテンの向こうが明るくなる気配がないまま7時過ぎにベッドを出ました。電気ケトルで湯沸かししつつ、カーテンを開けば朝から雪です。その日は八戸(Hachinohe:青森県八戸市)から弘前(Hirosaki:青森県弘前市)にクルマで向かう予定。クルマで走り始めてから十和田市現代美術館(Towada Art Center )に寄ってみようと思いつき、ナビの経由地に設定。雪に屋外展示がどう映えるか見てみようと思ったからです。
 写真は同美術館のアイコンともいえるチェ・ジョンファのフラワー・ホース(Flower Horse:CHOI Jeonghwa)です。戦前、このあたりに陸軍軍馬補充部があったことへのモニュメント的作品とか。ちょっとフェラーリFerrari)の、Un cavallo rampante(カヴァリーノ・ランパンテ:跳ね馬)風ですね。ただ尻尾も上がっているフェラーリと違って、こちらは尾が構造体ゆえか異様に太く、垂直に下がっています。さて、雪に覆われた尻尾の先はどうなっていたか、が思いだせません

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Kumano Kodo Kokuji-toge Pass

 熊野那智大社和歌山県東牟婁郡那智勝浦町)の神馬です。凜々しくも、ちょっと現代美術風な愛嬌もあります。いつも大社社務所までバイクで上がり、その一隅に駐めさせてもらうので、境内に入ってすぐ右手のこの神馬舎が最初の参拝となります。昨秋、熊野三山巡りをして以来の再会です。昨秋は外国人観光客が本当にたくさん居ました。三山を巡る熊野古道(kumano kodo)では、外国人の方が明らかに多かったほど。今年は残念ですがまったく見かけません。

 外国人人気の高まりを受け熊野古道の道案内は、欧文併記がかなり徹底しています。那智大社参拝後に新宮に向け、海を右手に国道42号線を走っていた時のこと。ミカンの無人販売棚を見かけバイクを停めると『のりこ農園』とあり、中玉ミカンが5,6個入った1袋が100円でした。百円玉を料金箱に入れ、袋を開けその場で1ついただくと、甘い! そして棚の向こうに道案内があり『← 熊野古道 小狗子峠 Kumano Kodo Kokuji-toge Pass』とあることに気づきました。ここで海へと果てる熊野古道もあるんだ、と感銘受けつつ、併記の欧文に「小狗子」は「こくじ」と読むと教わりました

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塩尻峠のモワルー オ ショコラ

 その日はツーリングの最終日で国道19号線に入ったのは夕方でした。恵那市岐阜県)に入ったところで日が山に落ち、気温がみるみる下がります。気まぐれに現れる国道沿い温度表示は6℃、4℃、3℃と落ちていき、塩尻(長野県)手前で0℃に。震えが止まりません。塩尻峠に入れば-2℃。ついに氷点下です。峠を下ったところ右手にガストがあったので、ほっとしてバイクを停めました。
 まずオーダーしたのは担々麺とドリア。温まりそうという理由のみのチョイスです。ヤケドに気をつけながら二皿たいらげ、まだ心底が寒かったのでモワール ショコラ(Moelleux au chocolat)をオーダー。柔らかいチョコレートケーキですね。やがてテーブルにやってきたそれをフォークで割れば、中から暖かいチョコレートが流出。これはどちらかといえばフォンダン オ ショコラ(fondant au chocolat) ではなかろうか? などと心中ひそかに思いつつただけば、その美味しいこと! 実は担々麺もドリアも「暖かい!」「熱い!」が「旨い!」を上回る歓びで、それゆえ味は覚えていませんが、アメリカンコーヒーといただいたショコラは絶品でした。氷結していた味覚が溶けて開き、モノクローム的だった味がいきなりフルカラーになったよう。あんなに美味しいモワルー オ ショコラにはもう二度と会えないかもしれません。氷点下の塩尻峠を越えるミッドナイトライダーは、是非。魂までフリーズドライ化してしまった夜は、ガスト岡谷インター店の「モワール ショコラ」がお勧めです

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湯上がりのきゅうり

 予定より早めにチェックインできたので、バスタブに湯を張り、どぼん。湯上がりには缶ビール。道の駅の物産コーナーで買ったきゅうりを水洗い。オピネル(のナイフ)で切ったら準備完了。

 やはり道の駅にあった四万十ジャコみそをきゅうりにつけていただけば、ひとり大宴会スタートです。気がつけば3本入りだったきゅうりが無くなり、ビール缶数本が空に。満腹&猛烈に眠い。あああ夕飯どうしよう?f:id:takimasashi:20201125001539j:image

ただのキレイな石でした

 ちょっと前の話ですが、イタリアのジェノバからミラノに向け、アウトストラーダ(Autostrada) A7をドライブしていたときのこと。日本でいうサービスエリアにあたるアウトグリル(Autogrill )でちょっと休憩。アウトグリルのバールでいただくエスプレッソやカプチーノ、パニーノは(どこかの国のサービスエリアとは違って)ちゃんとしていることが多く、割と好きです。写真はそのフロア一角にあったガチャ。博物館出口のミュージアムショップや、紀伊國屋書店新宿本店1階の鉱物標本店(確か店名は、東京サイエンス)にあったなら「さもありなん」ですが、サービスエリアに鉱物ガチャとは、なんだかイタリアっぽい。1ガチャ 1ユーロはちょっと値が張る気もしましたが、コインを入れて回してみました。
 コロンと出てきたのは、赤茶色の石。カプセルなんてヤワは纏わず、剝き出しです。剝き出しコロン!も、なんだかイタリアっぽい。その夜ホテルでふと思い、赤茶色の石をミネラルウオーターで洗いゆっくり噛んでみましたが、それはやっぱりガムなんかではなく、ただのキレイな石でした

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マルちゃん焼そば3人前198円の不可逆な宿

 日本の宿のクオリティと、対価の安さには(GoToTravel抜きにしても)驚かされること、たびたびです。それゆえ今夏オートバイでテント泊ツーリング中には、夜半の雨の憂鬱に「ホテルに部屋とっとけば……」ついついと悔やんだり。堕落の極みですね。
 写真は以前、ツーリング中に泊まった民宿で撮りました。通された漁港が見える二階、六畳間の座卓の上です。荷を解きながらお茶を入れ、タクアンをボリボリ。ミカン籠の複雑に折り込まれたスーパーのチラシを広げ「マルちゃん焼そば3人前が198円かぁ」と、意味なく納得。やがてミカンの皮を剥き、皮の置き場所に迷った瞬間、それがミカンの皮入れだったことに気がつきました。部屋で書く、お客様御利用カードも懐かしい。撮った日付けを確認したら、僅か16年前でした。もうもとの状態にはもどれないことを不可逆といいますが、2020年の自分にとってそこは不可逆な宿です

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静謐なシンメトリー

 この前泊まった温泉ホテルでは、宴会場を最小単位に仕切り、卓球場として開放していました。コロナで宴会が出来ないいま、いいアイデアだと思います。温泉と卓球は、枝豆ビールのごとき相性だし。
 ただ、この部屋を見つけたのがチェックアウト後だったのが残念。誰もいない、薄暗く広大なロビーを歩いていて、開いた扉から光が漏れているをのぞくと、こうなっていました。なんだか今にも向こうのドアが開き、双子の女の子が現れそうです。『シャイニング』(The Shining:1980 米)ですね。リゾートホテル独特の静謐は1980年以降、シャイニングを宿すようになった気がします。偶然なんだろうけど、シンメトリーもちょっと、ね……

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「ねじねじ」「こぎこぎ」「てくてく」

 10月下旬となった今でも沖縄県那覇市の最高気温は25℃オーバー。まだまだ夏日が続いています。逗子(神奈川県)でも最近は、朝晩は肌寒さを覚えるように。すると反射的に「ああ沖縄はいいよなぁ……」とうらやましく思い出します。では那覇空港に降り立ち何処に行きたいかと言えば、例えば、那覇市若狭の高良食堂に行ってタコライス(ソバ゙付)を食べたい。写真の通り、タコライスとしてはややアヴァンギャルドですがこれがイケます。ソバも付録では無くフルサイズ。以前も宇宙的ポーションの700円 Aランチを紹介しましたが、このタコライス(ソバ゙付)も650円とか700円とかだった気がします。
 食べ終えたら、若狭中通りと若狭大通りの交差点にある公園まで歩き、久米至聖廟(くめしせいびょう)脇の運動遊具「ねじねじ」「こぎこぎ」「てくてく」を順に試して、腹ごなし。日差しにやんわり汗を浮かべつつ「沖縄もやっと涼しくなってきたな……」とか、つぶやきたい

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トラクタの哲学と余生

 北海道の羊蹄山をのぞむニセコ町のどこか、たぶん牧場のアイスクリームショップとかにあったトラクタ。牽引している荷台にステップが付いているので、退役しディスプレイとして余生を送っているようです。ちょっと哲学的眼差しのフロッグアイですね。
 最近台湾ヤマハが発表した125ccスクーター「Vinoora」(ビノーラ)もカエル顔で話題ですが、このトラクタも悪くありません。同じ道内、上富良野町には世界一の規模を誇るトラクタ博物館があるのをご存知でしょうか? スガノ農機株式会社が運営する『土の館』内にそれはあります。国産車31台、輸入車62台、計93台のクラシックトラクタを常設展示。無料で開放されており、ただただ圧巻。老若男女、文句なしにおススメできるミュージアムです

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 オートバイに乗り、雨を避けるようになりました。サーキット以外で雨好きのライダーに出会ったことがありません。非力でもコントローラブルなマシンなら勝負に加われる、雨を得意とするレーサーはいますが、「よし、今日は待ちに待った雨だ。ツーリングに出かけるぞ!」というライダーには、まだ会ったことが無い。
 ロングツーリングの間には一日中雨の日もあり、宿の露天風呂もまた雨の中。そこに蛇の目傘があって、ちょっと斜に竹の柄を肩に乗せ、柿渋塗りの平紙に雨粒があたるボツボツを聴きながら湯に浸かったりすると「ま、雨も……」と、諦めがついたりします。でもまあ、晴れて欲しいけれど

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真昼のラファイエット・レイルロード

 昼にクルマで出かけ、カーラジオをつけたつもりでしたが、流れてきたのはリトルフィートLittle Feat)のラファイエット・レイルロード(LAFAYETTE RAILROAD)。ブルートゥース接続でスマホ音源が優先されたか、と思いましたが、曲が終わると長閑なBGMとともに、福島県のくりくりぼうずさんのコスモスを詠んだ秋の句が紹介されました。これはどう考えても、1952年(昭和27年)に放送を開始した長寿番組『ひるのいこい』です。でも『ひるのいこい』でかかる曲といえば、美空ひばりの「りんご追分」とか、三橋美智也の「達者でナ」がデフォルトのはず。赤提灯のカウンターに座ったら、お通しにチリコンカーン(chili con carne)が出てきたような違和感です。どうしたのでしょう? 確か生放送、ローウェル・ジョージ崇拝者にスタジオが乗っ取られたとか?
 戻ってからwebで確認したら、確かにラファイエット・レイルロードがかかっていました。HPの解説には〝番組では、お便りが3本程度と、暮らしの文芸と題した、日常の風景を詠んだ俳句や短歌が1本。その合間には「ひるのいこい」ならではの、グッド・オールド・メロディーが2曲ほど流れます〟とあります。そうか、ラファイエット・レイルロードもグッド・オールド・メロディーなのか。それにしても、あのひるのいこいで、ローウェル・ジョージのスライド・ギターを聴けるとは! つい昨日(2020年10月7日)の話です

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