「男と、海と」 ゴールデン ベスト!
旅先で視覚的に異郷を強く感じるもののひとつに自分の場合、漁船があります。これはスウェーデンで異郷を感じた瞬間に撮りました。この時はトロルヘッタン(Trollhättan)でサーブの広報車を借り、エーランド島(Öland)までのドライブを取材した覚えがありますから、撮影場所はカルマル(Kalmar)周辺かもしれません。
背景左右にあるヨットのたたずまいといい、まだ水温の低そうな海の色といい、赤いキャップを被ったようなボートの塗り分けといい、なんだか1960~70年代のクールなジャズ コンピアルバムのジャケ写のようです。日本でこの構図で漁船を撮ると、やっぱり『演歌〝男と海と〟ゴールデンベスト!』とかにならざるを得ないのだろうな
ポ テ チュウ!
立呑みのカウンターで『ポテトサラダ 300円』を頼んで、その後2杯ほどいただきすっかり忘れた頃、おまちどおさま、とこの皿が出てきました。これは? と聞くと「ポテトサラダです」とのこと。キジムナー? シーサー?
撮ってもいいですか? と聞くと、カウンターの中黙々と料理しているお兄さんは、箸の手を休めず「……ポテモンといいます」とつぶやきました。トミヤランドリーという店での出来事です
ANA 日ノ丸航空
ホテルニューオータニ鳥取のエレベーターに入り、部屋のある階までフロア案内を眺めていて、何かがひっかかりました。『ANA 日ノ丸航空』とは何でしょう? なんとなく、最上階の眺めのいいバーが思い浮かびます。でも『日の丸航空』とは大胆です。人口最少県で控えめにANAがナショナルフラッグキャリア宣言? でしょうか。
その後夕食のためにロビーに出て、モヤモヤが晴れました。ANAの総代理店として鳥取・米子空港業務をしている日ノ丸自動車株式会社が運営する、ロビー一角の旅行代理店でした。ちなみにこの日ノ丸自動車は鳥取県及び島根県東部でバスを運行している会社。東京や岐阜、帯広の日の丸とは無関係とのことです。眺めのいいラウンジなんかではなく、ちょっと残念……
声低そうなキ1567
小樽市総合博物館(北海道)の屋外に展示されていた単線用ラッセル式除雪車、キ1567です。機関車に後押しされ、屋根上のタンクに機関車からの圧縮空気を溜め、左右の除雪翼を空気シリンダで開閉するのだそうです。かっこいいなあ。
この鉄人28号的フォルム、どこかで見た気がします。よくよく考えたらピクサー映画『カーズ』のキャラでした。以前ルート66の取材でセリグマン(Seligman, Arizona)を訪ねた際、そこは映画『カーズ』の舞台となった街とのことで、スノーキャップドライブイン(The Snow Cap Drive-In)のバックヤードにはカーズのキャラに仕立てたクルマが並んでしました。その中にこのキ1567が居ても違和感なさそうです。何のデフォルメも不要でしょう。……声はかなり、低そうです
眺めのいい机で予告状
オートバイで走り出してすぐに、ああそうだった、と思い出しました。葉書を書かなくては! 数日後に行く予定の食堂に予告状を出さなくては。いつもふらりと訪ねるので「前に言ってから来なさい」と女将さんに笑いながら怒られるからです。
しばらく行ったら右手に郵便局。バイクをとめ葉書を1枚買って、机を借りて予告状をしたためました。まぁこんな感じかな、と読み返してから目を上げると国道越しに海が広がっています。ああ、こんな眺めのいい机で書いていたんだと、気づきました。じんわりと旅情に包まれ、遠くへ来たなぁと、ライダー至福の瞬間です
バーリ空港を走る彼女
ボーディング・ブリッジが切り離され、機体が動き出しふと見ると、職員の方が横に並んで手を振りお辞儀までしています。海外では見た覚えがないので、あれは日本独自の慣習でしょうか。窓外に手を振る人を見ていて思い出すのは、以前イタリアのバーリ空港での出来事。取材を終えミラノに戻り、その日のうちに成田行き搭乗の予定でしたが、バーリ発便が遅れ、成田行きに間に合わない可能性が出てきました。フライトはどちらもアリタリアだったので、カウンターで確認。担当してくれた女性は親身にいろいろトライしてくれ、だいぶ時間はかかりましたが、一応その日のミラノの宿と次の日の成田便の席を確保するよう働きかけてくれ、ミラノ・マルペンサ国際空港の担当者名のメモもくれました。
そのうちミラノ行きが飛ぶことに。動き出した機上の人となりヤレヤレと窓の外を眺めていたら、カウンターの彼女が飛行機の横を走っています。えっ? と思ってよく見れば、手に掲げているのは自分の取材ノート! カウンターに忘れたんだ!! と、そのとき飛行機は停まりタラップが架けられ、ノートはタラップを駆け下りたキャビンアテンダントの手に。その後機内では「このノートの持ち主はいますか?」となり、手を上げた自分。ちょっと勇気がいりましたが、幸い隣の席の方が「ハハ、コングラチュレーション!」と混ぜっ返してくれたので救われました。もう十年以上前の話です。その頃のアリタリアは、忘れ物でも停めてくれました。アルマーニのグレーのスーツの彼女の、ジェット機を追いかけ停めようと走るフォームは、たいへん美しいものでした
久高島スルバンにて
久高島は沖縄本島南部東海岸の南城市、安座真港から高速船で約15分、フェリーで約25分で行ける離島。那覇から日帰り可能な神々の島です。沖縄県内でのコロナ感染者が増えていることから、渡島自粛要請がこの8月1日に出されたとのこと。残念です。
写真は集落内にあった『スルバン』。なんだかとても心なごむ一角でした。トタン屋根の小屋壁面に描かれた窓がポップ。横浜トリエンナーレとか十和田市現代美術館に展示されていても合いそうにキュートです。ところで『スルバン』とは何? とまわりを探したら、木目調の標柱に〝Ship captaion's mansion〟との表記が。〝船長邸〟でしょうか? 謎はより深まりました。あ、よく見たらオラフもいます!
祝 直4クオーター復活のNinja ZX-25R
250cc 4気筒のオートバイが約30年振りに復活します。写真は昨年(2019年)の東京モーターショー、カワサキブースに展示されていたNinja ZX-25R。ほぼこのままのカラーリングで9月10日にリリースされるNinja ZX-25R SE KRT EDITIONのプライスタグは913,000円(税込)。ちなみにNinja ZX-25Rは825,000円(同)からのラインナップ。〝直4 クオーター〟で自分が思い出すのは、1985年にヤマハからでたPHAZER(フェーザー)250です。水冷DOHC4バルブエンジンを搭載し、パワーバンドは8,000~16,000rpm。レブリミットは17,000rpmでした。下はスカスカでしたが、高回転を保てば小気味よく走りました。バイク専門誌の取材で春先の九州を何日かフェーザーで走りましたが、そのブン回しエンジンのツボをとうとう解せず、ツーリングを終えました。
さて、ZX-25Rの登場で、HONDA、YAMAHA、SUZUKIからも直4 クオーター復活となるのでしょうか? ちょっと楽しみです。コンパクトで軽くて長く乗れるモデルが欲しいところ。自分的にはレーシングライクでなくて、いっこうに構いません
急行 高千穂・桜島
京都鉄道博物館のトワイライトプラザにたたずむ、ちょっと流線型なEF58。この150号機は東京芝浦電機製電気機関車で、1959年生まれだから自分より年上です。EF58で自分が思い出すのは『急行 高千穂・桜島』です。東京駅と西鹿児島駅を往復する客車急行で、門司駅で鹿児島本線経由の『桜島』と、日豊本線経由の『高千穂』とに分かれ、ともに終着駅は西鹿児島。10:00 東京発で、『桜島』は翌日の11:43、『高千穂』は同14:20 西鹿児島着です。よりロングランな『高千穂』は1574.2kmを、28時間20分をかけて走っていました。
その『急行 高千穂・桜島』を東海道線内で牽引していたのが、このEF58です。当時の自分の最寄り駅だった静岡には下りが12:48、上りが13:18に停車するので、時々眺めに行っては「いつかはこれで西鹿児島まで……」と夢見ていました。ブルートレインのようなヘッドマークもなく地味でしたが、そこも「シブイし」と気に入っていました。ところが中1終わりの3月、運行終了になると知ります。失意のなか「乗っておかないと」と、学校をサボり浜松まで1時間ほど乗車。平日昼は乗客もまばらで、横を東海道新幹線が駆け抜けて行きます。それでもガタガタ揺れる木目ニス塗りの車内には煙草のそれとともに自由の臭いも立ちこめていて、中一の自分はゴキゲンでした
風に吹かれて
閉鎖が解除されたと聞き、ひさしぶりに小網代の森(神奈川県三浦市)を歩きました。木道をとんぼや蝶が頻繁に横切り、草の香を含んだ夏の風が吹き渡ります。蝉はまだのようです。緑にぐんぐん分け入れば山原(やんばる:沖縄本島北部)を歩いているかのよう。
木道は知床五湖の高架木道や、釧路湿原、尾瀬、屋久島などがメジャーです。旅先で見かると、時間があれば歩きます。自分にとって、ひとり歩いていると急に寂しくなるのが木道です。何年か前、夏の晴れた日中にベンセ湿原(青森県つがる市)の木道を歩いていたら、いくら進んでもひと気が無く、急にゾゾっとして入口に駐めたオートバイまで早足で戻ったことがあります。なぜ木道には、臆病風が吹くのだろう?
スカレーとフィリップ・ノワレ
横須賀駅(JR 横須賀線)はいまもクラシックな佇まいで、時々散歩がてら利用します。スカ線はここからの下りは単線となるのでホームの端がそのまま改札で、階段がありません。そして駅舎入り口には写真のスカレーが立っています。海上自衛隊の水兵風制服をカモメに着せた、よこすか海軍カレー公式キャラクターです。「ヨコスカ」+「カレー」だから「スカレー」。語呂の悪さも芸のうち、でしょうか。
この顔を見るたび、自分は映画『イルポスティーノ(IL POSTINO 1994 伊)』で、チリからイタリアに亡命してきた詩人を演じた名優フィリップ・ノワレ(Philippe Noiret)を思い出します。もう亡くなってしまったのでかないませんが、スカレーの半生を描く映画『よこすか海軍カレー物語(仮タイトル:実写版)』を撮るとしたら、主役はフィリップ・ノワレが良かったな。名優はちょっと京唄子師匠にも似てるんだよなァ、……ぽてちん!